太田朝敷

芋の葉露(田舎生活)- その7

(七)文明の風潮は多少村落生活の中にも染みこみ宴会抔も自ら新旧三様の風あり。新風の宴会は天長節とか新年とか云ふ折に開かるゝものにてこれは云はゞ公会の性質を帯びたるものなれば旧態の宴会と云(いわ)〔く〕の趣を異にするのは当然の事なり。さてこの宴会は村事務所に会し豚豆腐抔の煮しめを肴とし泡盛を飲んで楽しむまでにて三味線を弾じ鼓をたゝくが如きことはなし。

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芋の葉露(田舎生活)- その6

(六)都鄙を通して百俵の土地を有する者は豪農とす。一俵(約60キロの米穀と仮定)の坪数は地味の肥瘠位地の便不便によりて甚しき差あり。那覇首里の近在にして六十坪一俵の所あり、或は七八十坪一俵の所あり、偏在の瘠地となれば百乃至二百坪一俵の所もあれども先づ平均したる所で八十坪位(約264平方㍍)の所なるべし。

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芋の葉露(田舎生活)- その4

(四) 膳皿の類は田舎屋にても上等の部に属する所は一通りの設備あり。されどこれ十中一二を数ふる位ひなり。茶飲茶抔は支那製の随分高価(ふも十個一円位ひに過ぎず)のものを所持する向もあれども茶盆は正七月市の出来合ひものにて誠に釣はぬもの多し。

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芋の葉露(田舎生活)- その3

(三)穴屋の構造は大略前回に述べたるが如し。田舎にて□家屋と云へば先づ穴屋が普通にて瓦家及びヌキ屋は余程贅沢なる家屋なり。而して瓦屋は旧藩の時代に於ては禁制なりし故田舎にては番所(今の役場)の外に瓦の屋根を見ざりしが、近来は財産家争ふて瓦屋を造るに至り島尻中頭には瓦屋は恐らくヌキ屋より多きに至りたるならん。斯く瓦屋が流行するも間取り又は構造に数寄を凝したるものとては一軒もなくこれ又版に押したるが如くヌキ屋と同様なる構へなり。多くはヌキ屋の組建てに瓦を乗せたるに過ぎざるなり。

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芋の葉露(田舎生活)- その2

(弐)那覇より半程も踏み出せば忽ち村落的の趣味を感ずるなり。本県の村落は他府県とは趣きを異にし、所謂地人(純粋の百姓)は多きは七八百戸、少なきも四五十戸一団となり殆んど町の体裁を形成せり。ただ居住人と称する那覇首里等より寄宿したる一種の農民は耕作の便宜を逐(お)ふてその住居を定むる故処々に散在せり。この有様は那覇近在より遠く国頭に至るまで少しも異なる所なし。

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芋の葉露(田舎生活)- その1

(壱)三百年来人の生血を見たることなき人民に曾て戦乱抔(など)の恐るべきを知らず恐るべきものはただ飢饉のみ。或(ある)老農畑の側なる小松原に腰をかけ煙草を吹かしつつ余に語りて曰く、手前共に米も二十俵位は作り砂糖も十四五挺は作り、その他麦も豆も少しづつ作り候へども、一番大切のものは其処一面に蔓これる芋にて候。

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砂糖取引の改良を望む

今回は明治34年1月11日付琉球新報2面に掲載された論説を公開します。ブログ主はこの論説の存在を「琉球新報は何事を為したる乎」で初めて知りましたが、実際にチェックすると琉球国から明治にかけての糖業の致命的欠陥を伺うことができる第一級の史料であると確信しました。その欠陥とは流通ルートを薩摩人(あるいは鹿児島県人)の糖商に牛耳られてしまったため、黒糖の買い手が圧倒的に有利であったことです。

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廣告の利益

今回も太田朝敷関連の資料を掲載します。琉球新報は明治33年7月15日から紙面を大幅に改良しますが、その2日後に「広告の利益」と題打った社説を掲載します。ブログ主はこの論説を非常に重視していますが、その理由は琉球新報社が営利を意識して新聞を発行していたことがハッキリ分かるからです。

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寄奈良原男爵書

今回は明治33年(1900年)9月17日付琉球新報の無署名記事「寄奈良原男爵書」を紹介します。奈良原繁知事在任中(1892~1908)に掲載された知事評は実に珍しく、しかも論評が極めて冷静かつ的確であり、明治時代のジャーナリストのレベルの高さと社会における言論の自由度を伺える内容となっています。

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琉球新報は何事を為したる乎 – その3

●琉球新報は何事を為したる乎(承前)

◎教育に関しては前項にも述べたる通り、我輩は多く専門家に譲り、只其結果として社会に出現したる弊害に就ては随時酷と思ふ程の批評をなしたること往々これあり。その要点を一二挙ぐれば本県の教育家が外観(ミエ)を張る為めに不相当の設備をなして民力を顧みざりしこと、教育の方法が社会の要求に副はざるもの多きこと、教育家に死法に拘泥して活知識に乏しきもの多き事にして、直言の為めその反目を受けたることまゝありき。然れども諸君我輩は教育に重きを置けばこそ苦言も呈するなれ、我輩が常に教育家に向かって相当の尊敬を払ひ、鄭重の待遇をなすを見ば教育家諸君は当に我輩の微衷を諒察せらるべし。

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