ロックとコザ(1994)川満勝弘(愛称:カッちゃん)編 – マヤー回(その2)

(続き)やっぱり、夜でも砂辺の海岸にはアベックがたくさんいましたよ。三時ごろに、私たちはその中を懐中電灯を持って歩きながら、「エー(なあ)🐈でもさ、魚を三枚におろすさ、あれと同じみたいなもんじゃないか」といったら、「皮がついてる。キー・ブター・シ、カー・チャー・スガ(毛だらけだのに、皮はどうするわけ)」といわれたんです。それで「皮な。皮は焼いたら」とかいうと、また「違うさ。あれは、鶏でもなんでも焼くのは、焼きブタとかじゃないか、毛を取るとかああいうの」というのもいるんです。

すると「生きているんだのに最初に殺さんと、イッター・チャー・スガ(お前たちどうするわけ)」ということになって、「トォー・アン・シェー(ようし、それなら)」といって、黒いチリ袋では破れるので、カシガー袋(南京袋)っていうのかな、そういうのを探してきて🐈をその中に入れてリーフを歩いていったら、むこうから釣り人がやってきて「ハイ、ニーサン、ヌーガ・クゥーイ・タン(どんな魚が食いついたか)」と話しかけてくるんです。私たちはそれに答えて「いや、ナマカラ・ワッターン(俺たち今からです)。ヌーガおじさん、イラブチャー・ドゥ・ヤン・ナー(何なのおじさん、ブダイなの)」というやりとりしていて、その間も🐈は袋をこんなにとてもしぼっているから、袋の中で「フガフガ」いっていました。

そうして、「エー、ターン・ウラン・ダヤー(おい、誰もいないだろ)。エー、アマ・ウティ・ワッター・シッチョー・ルー・ガ・ウタン・ドー(おい、あそこに俺たちを知っているのがいたよ)。コンディショングリーンじゃないかってねアベックがイチョー・タン・ドー(話していたよ)」といいながら人気のないところに来て、「トォーハイ、ナイフ・ムッチョー・ラヤー(よし、ナイフ持ってるだろ)」といって始めようとしたら、「エー、マテェー。マヤーヤ・ヨー、モクマオーン・ネーン・シェー・ヤー、首つりシェー・ナラン・サー。トォー・アン・シェー・ヨー、トォー・ジャンケン(おい待て。🐈はな、ここには木麻黄の木がないから首つりはできないな。よしそれじゃジャンケンで決めよう)」ということで、「はい、ジャーン・ジャーン・ジャンケン、はい」とやって決めて、

「はい、ヤー・クルシェー(おまえが殺せ)」

といったんですが、「イーヤ、ワンネー・クルサン・ムン(嫌だ、俺は殺さないよ)」といって、🐈だからもうみんな、怖がって後ずさりしてしまったんです。

そのうち、メンバーの一人が「えっと、全身打撲じゃなくて、睡眠不足じゃなくて、溺死じゃなくて、窒息死じゃなくして、一番手っとり早いのは」と独り言いいながら、🐈が袋の中で暴れているのを見ながら、「頭がこれ、頭ヤッサー(頭だ)、これが頭」とつかんで一瞬のうちに

「ミャーッ」

と首の骨を折ったんです。これを出すと、やっぱり舌を出して死んでいるわけですよ。

逃げ出していたみんなに「大丈夫、もう大丈夫。死んでるから」と呼び寄せたんです。そして、「カー・ヤテー(皮はな)、こうチヤー・ナ・カイ(切って)首と外してから、一応これ、カー・ムル・トゥレー、ハイ(皮は全部剥ぎ取れ、ほら)、引っ張れ首」と🐈の解体にとりかかっていると、そのときに懐中電灯で🐈の目が光ったものですから驚いて誰かが「ウォーッ」と叫んでいましたよ。

しかし、三、四人でこうやってるんですから、オカルトじゃないですかこれは。「🐈の首、皮剝いで、エー、クヌ・ヒサ・ヌキラン・サー(おい、この足抜けないよ)」といいながらも、やっと丸裸にして内臓も出して水で洗って、私あっちはこれみんなちり袋に入れて(持って)、「アイ、帰るの」と誰かに声かけられると、「うん、帰るよ」といってね、知らんふりしてまた防波堤のところを歩いていくわけです。(続く)