沖縄返還に対する周恩来首相のコメント

宮里松正著『米国支配27年の回想』の179㌻に沖縄返還に関する周恩来首相(当時)のコメントが掲載されていました。その内容は下記参照ください。

1969年(昭和44年)4月6日 中国の周恩来首相は、日中覚書貿易事務所の吉井喜美代表、宇都宮德馬自民党代議士らと会談し、「沖縄は日本の領土であり、毛主席もこれを認めている。日本の返還要求には理由がある」と語った。

同年11月22日、アメリカ・ホワイトハウスにおいて日米共同声明が発表され、沖縄の施政権を日本に返還することで合意します。約50年前の話ではありますが、上記周恩来首相の発言から中国共産党は沖縄の施政権は日本に返還するのが筋であると認識していたことがわかります。

ちなみに、昭和47年9月29日の日中共同声明、および昭和53年10月23日批准の日中平和友好条約をチェックすると「両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする」(日中平和友好条約第一条一項)と明記しており、先の周恩来発言の流れから鑑みると人民解放軍による尖閣諸島および沖縄侵略はありえないことが分ります。

もしも尖閣諸島や沖縄侵攻なんて事態を引き起こしたら、中国共産党の偉大な先人である周恩来や鄧小平の業績にケチをつけることになり、これは中国人が忌み嫌う行動パターンでもあります。ちなみに周恩来さん、外務省のホームページによると

【参考:日中首脳会談(田中角栄総理/周恩来総理)(1972年9月27日)】(外交記録公開済み)

 (田中総理)尖閣諸島についてどう思うか?私のところに,いろいろ言ってくる人がいる。
 (周総理)尖閣諸島問題については,今回は話したくない。今,これを話すのはよくない。石油が出るから,これが問題になった。石油が出なければ,台湾も米国も問題にしない(尖閣諸島に関するQ&AのQ14より)

とのコメントを発表しています。つまり石油がでなければ問題にすることはない、尖閣諸島は日本の領土であると暗に認めているのです。実際に尖閣諸島の石油なんて採算ベースに乗らないことが確定している案件ですから、中国共産党としても本音ではどうでもいい地域であると言っても過言ではありません。

それでもちょっかいを出してくるのは、中国共産党と海軍(東海艦隊)との間で深刻なトラブルを抱えていると判断して間違いなさそうです。尖閣問題に関しては外務省のホームページに記載されている通り、「領土問題は存在しない」との原則を唱えればいいだけの話で、それでもごねたら

「お前は先輩である周恩来や鄧小平の業績にケチをつけるつもりか。それと日米を本気で敵に回して尖閣諸島を領有したいのか?」

と強気でいけば無問題です。繰り返しますがこれまでの外交の流れでは中国側が尖閣諸島や沖縄を侵攻・領有することはありませんし、中国共産党は野蛮人の集合体でもありません。日米安保条約の範囲内で十分国土防衛は可能であることを明記して今回の記事を終えます。

【注意】昭和44年4月6日の周恩来発言は、宮里松正氏の著作以外ではまだ資料が確認できていません。見つけ次第後日記事掲載します。