沖縄における旧革新勢力とその支持者が堕落した最大の理由を考えた結果……

ここしばらくブログ主は瀬長亀次郎さん関連の史料をあれこれ調べていました。たしか故谷沢永一さんのご指摘でしたが、「その人が何をしていないか(あるいは何に対して沈黙しているか)を調べると、本質が見えてくる」との方針で記事を掲載しましたが、その過程で1つ面白いことに気がつきましたので、この場をかりて説明します。

瀬長さんは亡くなるまで、己に都合の悪いことは一切触れることがありませんでした。この事実は彼がカリスマ的な人気を誇っていたことを物語っていますが、もしも自己批判、あるいは人民党や日本共産党が瀬長さんの過ちを公式で批判したらどうなったのか、おそらく沖縄における旧革新勢力はとっくに絶滅していたと思われます。

現在の沖縄の政局で、オール沖縄を支える存在として日本共産党沖縄支部の存在感が際立っているのは、亀さんとその支持者が彼の不都合な事実について一切触れていないことが一因です。小室直樹博士が指摘する「カリスマ的指導者は絶対にカリスマを手放してはならない、傷つけてはならない」の見本ともいえます。

だがしかし、ブログ主にとって現在の旧革新勢力とその支持者は堕落仕切った存在にしか見えません。共産党は統制が取れていますのでまだマシに見えますが、社民党や社大党、そして辺野古や高江に集まる正体不明の活動家の有様をみると、理解に苦しむケースが多すぎます。なぜそうなったかを考えると、彼等が今まで信じていた信念がなんらかの理由で崩壊したため、その心的パニックを引きずっているとしか思えないからです。

小室直樹博士はそのような現象を“急性アノミー”の理論によって説明されていますが、沖縄の旧革新勢力とその支持者にもそれが当てはまります。『日本国民に告ぐ』の第六章 – 日本人の正統性、復活のために、で小室博士はアノミーについて以下のように説明していますのでご参照ください。

(中略)前章で、日本人がなぜ、いともたやすくアメリカのマインド・コントロールを受けたのかについて述べた。最大の理由は、終戦によって発生した急性アノミーを利用したからである。GHQの「日本人洗脳計画」は、戦後日本の恐るべき「急性アノミー」現象をさらに拡大再生産した。

アノミー(anomie)とは何か。「無規範」と訳されることもあるが、それよりも広く”無連帯”のことである。アノミー概念については、拙著『大東亜戦争ここに甦る』(クレスト社)でも述べたが、本書のテーマを理解するうえで、不可欠の概念でもあるので、再説しておきたい。

アノミー概念を発見したのは「社会学の始祖」E・デュルケム(フランス人、1858~1917)である。デュルケムがアノミー現象を発見したのは、自殺の研究を通じてであった。彼は、生活水準が急激に向上(急落の場合だけではない)した場合にも自殺率が増加することを発見した。

なぜか。生活水準が急上昇すれば、それまで付き合っていた人たちとの連帯が断たれる。他方、上流階級の仲間入りを果たすのも容易ではない。成り上がり者との烙印を押され、容易には、付き合ってくれない。かくして、どこにも所属できず、無連帯となる。連帯(solidarie)を失ったことで、狂的になり、ついには自殺する。

これがアノミー論の概略。このように生活環境の激変から発生するアノミーを「単純アノミー」と呼ぶ。その心的効果は「自分の居場所を見出せない」ことにある。どうしてよいか途方に暮れる。そして正常な人間が狂的になる。

アノミーには、この単純アノミーのほかに、「急性アノミー」と呼ばれる概念がある。これは、信じきっていた人に裏切られた利、信奉していた教義が否定されたときに発生するアノミーである。

急性アノミーが発生すれば、人間は冷静な判断ができなくなる。茫然自失。正常な人間が狂者よりもはるかに狂的となる。社会のルールが失われ、無規範となり、合理的意思決定ができなくなる(中略)。

では沖縄の旧革新勢力は何を信奉して、そしてどのように裏切られたかを考察すると、その答えはただひとつ、平成6年7月18日の第130回国会における村山内閣総理大臣初心表明演説のこの一節です。

(平和国家としての国際貢献)

世界は今、歴史的変革期特有の不安定な状況におかれています。冷戦の終結によって確実に1つの歴史が終わりましたが、次なる時代の展望は未だ不透明であります。中東などで和平に向けての進展が見られる反面、北朝鮮の核開発問題、旧ユーゴスラヴィアでの地域紛争等は、国際社会の平和と安定に対する深刻な懸念材料となっています。また、世界経済についても、全体として明るさを取り戻しつつあるものの、先進国における失業問題、開発途上国における貧困問題、地球規模の環境問題等深刻な問題が横たわっています。

このような国際情勢の下で、我が国はどのように対応していくべきか。一言で申し上げれば、国際社会において平和国家として積極的な役割を果たしていくことであります。我が国は、軍備なき世界を人類の究極的な目標に置いて、二度と軍事大国化の道は歩まぬとの誓いを後世に伝えてゆかねばなりません。また、唯一の被爆国として、いかなることがあろうと核の惨禍は繰り返してはならない、との固い信念の下、非核三原則を堅持するとともに、厳格に武器輸出管理を実施してまいります。もとより、国民の平和と安全の確保は重要です。私は、日米安全保障条約体制を堅持しつつ、自衛隊については、あくまで専守防衛に徹し、国際情勢の変化を踏まえてその在り方を検討し、必要最小限の防衛力整備を心がけてまいります(中略)。

沖縄はおろか日本における革新勢力の基本方針の1つに「護憲・反安保」があります。そしてその論理的帰結として「自衛隊は違憲であり認めることができない」になりますが、日本社会党の村山富市氏が初心表明演説で明確に否定したことで、旧革新勢力の信念が粉々に崩れてしまったのです。2期目に入った大田昌秀知事の普天間基地の移設問題をめぐる暴走ぶりはこの演説と無関係でありません。

ブログ主は当時の旧革新勢力が、村山氏の演説に対してショックを受けていたことを覚えています。特に沖縄は反自衛隊感情が強い地域でしたから、社会党の党首の口から安保と自衛隊を認める発言が飛び出したことに対する衝撃は大変なものでした。これが旧革新勢力とその支持者のアノミーの始まりで、その後鳩山由紀夫氏がアノミー状態に拍車を掛ける大失態を犯してしまいます。

現在のオール沖縄とその支持者はハッキリ言って“自我の崩壊を食い止める”ために生きていると言っても過言ではありません。だからブログ主は20~30代の人たちには、「旧革新勢力とは距離を取れ」と忠告しています。福島瑞穂さんなんて典型的な例でしょう、沖縄2紙の公平さを欠いた論調も同じです。一見すると正義を語っているように見えるも、その実自分が何をしてるのか分からない人物や団体が沖縄に棲息している事実に我々はもっと警戒すべきなのです(終わり)。


【関連リンク】

第130回国会における村山内閣総理大臣初心表明演説(平成6年7月18日)

https://www.kantei.go.jp/jp/murayamasouri/speech/murayama.html#Asiapacific

 

SNSでもご購読できます。