骨肉の争い / 旭琉会会長射殺 ■5■ / 壊滅作戦

多和田会長射殺事件は犯人2人の早期逮捕と県警の厳重な警戒体制が功を奏して、今のところ内部抗争に発展する気配もなく、事態はいちおう沈静化の方向に動き出したようだ。しかし暴力をバックにした不法集団内部の陰湿な権力闘争によって、県民の受けた迷惑は計り知れない。

旭琉会の最高執行機関である総長会議が「抗争は絶対に起こさない」と約束してケリをつけたとしても、力の論理を信奉する暴力団という組織がある限り、同様な事件が発生しないという保証はない。「暴力団排除県民運動」など世論の盛り上がりを背景に、旭琉会の徹底壊滅をめざす県警捜査二課の関一課長に、今回の事件の背景や旭琉会の今後の動向、取り締まり方針などについて聞いてみた。

スピード検挙、排除 / 県民協力が何より効果

ー事件の捜査の進展は?

まだ本格的な取り調べを始めたばかりで、動機などについてははっきりしていない。送検の段階で「組織的な犯行ではない」と供述しているが、これからの調べでその解明に全力を挙げる。

ー事件発生の日に犯人らを逮捕できた理由は?

当初から組内部の者の犯行とみていたが、1日でスピード検挙できたのは県民の協力があったから。深く感謝したい。

ー会長射殺という衝撃的な事件に至る背景はあったのか。

いくつかある。まず旭琉会内部でワンマン的な権力を持つ多和田会長が、組織の基盤を固めるため一家総長制上納金制” “島割りなどの新しい方策を推し進めていった。その過程で、一部の反対の声を封じ込めて強行するということもあり、反感を買っていた。もう1つ、「暴力団排除運動」の高まりで縄張り料が集めにくくなり上納金を納めるのに四苦八苦していた組もあり会長への不満が高まっていた。これらが今回の事件の原因にもなっている。

ー旭琉会は12日の総長会議で組織の当面の運営方針を協議したが、組織再編によってどう状況は変わるのか。

照屋正吉副会長を会長代行に集団指導体制を敷くようだ。しかし、組織は次第に弱体化するとみている。旭琉会をたたくのに絶好の機会だ。

ー今後の取り締まり方針は。

トップを失った旭琉会は島割りの再検討や跡目相続をめぐってかなりの混乱が続くだろう。島割りそのものは来年からの実施予定だったが、旭琉会にそんな余裕はないのでは。抗争を警戒しながら、組織の壊滅に総力を挙げるというのが県警の方針だ。(おわり)(昭和57年10月15日付沖縄タイムス15面)