ロックとコザ(1994)川満勝弘(愛称:カッちゃん)編 – その24

□冗談だけど、いたずらが好き 私は今独身ですけど、いたずらが好きですね。たとえばこういうこともやりました。

「今日バンドの練習がライブハウスであるから」

といったら、「ぜひ練習しているところを見たい」とかいう若い女性四、五人で来るとしますでしょ。これがまた、ただはやらんで何かいたずらを考えるわけです。

「じゃ今日練習があるっていうから」と教えておいて、「おい、今日、練習見学者が三人いるから、女性だよ。二ニ歳から二五歳以内の人が」とみんなに知らせて、「じゃ、おまえさ、入り口があるさ、階段を降りていくさ」といっていたずらを考えるわけです。

私の店は地下なので階段で降りて行くんですけど、入り口を入ってだいたい三メートルぐらいに脚立があるんです。それで、本当は音もガンガン鳴って練習してると思ってくるけど、暗いでしょ。そして、入り口から入ってくると真正面に、この脚立から首を引っ張られて、すっぽんぽんで仰向けになって入り口に向かって向かって立っているわけです。

その三メートル横に水がいっぱい入った緑色のポリバケツがあって、そこに腕を後ろに結ばれて上半身裸で首を突っ込んでいるわけで、エツーには「おまえはこうやれ」といってさせました。

もう一人は、ステージの後ろにシャワールームがあって湯船もあるから、そこに真っ赤なペンキを入れて、あの目ん玉の大きいエディがすっぽんぽんでこの赤い血の中に浮かんでいるという設定で見学者を迎えようとなっているわけです。

そして、店のシャッターを開けたら、いろんなびんとかカマとか石とかチリとかがもう散らかっていたんですが、見学者は「カッちゃん、音が聞こえないね、練習やってないの」と聞くんですそれで私が「アイ(あれっ)、今日もうやってるはずよ。だってさっきここから電話があっただもん。あと二時間は練習をやる時間だもん。アイおかしいなあ。大丈夫だから降りてごらん。気をつけてよ。あれっ、電気が切られているな、今スイッチ捜すからちょっと待ってて」といったら、彼女たちも「暗いのにいないんじゃないの、カッちゃん」と音も聞こえないし変に思っているんですけど、私は「いや、この辺にスイッチがあるよ。ちょっと大丈夫。気をつけてよ、はい、こっちこっち」といって一緒に降りて行って、「あれっ本当だね。食事に行くわけないはずよ、さっき電話あって今日はあと二時間やる予定だから。じゃとりあえず中に入って、むこうにスイッチがあるから、一緒にほら手をつながないとキッチャキ(つまずいて)倒れるから」といって、スイッチを入れたらパッと電気がついて中が見えるわけです。すぐ目の前にはあれが逆立ちなっているし、こっちではバケツに首を突っ込んでいるので、彼女たちは驚いてもう「ウワーッ」となっているんです。

階段の足音でわかりますから、シャッターを開けてから何分後に水の中に首を突っ込むことができるんです。

もう大声で「どうしたんだ、おい、あれっ、エツー。あっ、なんだこれ死んでいるのか。ヒャー」といって私はもう腰ぬかしているまねをしているわけです。彼女たちも「あれっ、もう一人水の中に縛られて首突っ込まれている。ウワーッ」と三人とも腰抜かしているからなかなか歩けなくて、階段でガタガタして逃げられないわけです。

その間に水から顔を出して息しているんです。

そしてまた、私は「ちょっと待て、犯人はここにいるかもしれないよ、危ないよう今。俺も怖いから、エー側にいてくれ。まだいる。これはさ、本当にまだいるかもしれないよ」といってひき止めて、とにかく一緒にもう一人捜そうといって、ステージの後ろの別の通路から行くと、そこでは赤い湯船でメンバーの一人が目を開けてこう死んだふりしているわけです。

それで、店の中で「だめだ、だめだ」とパニックになっている彼女たちに、私が「落ちつけ、落ちつけ」とやっているときに、水の中に首を突っ込んでいる人が「カッちゃん、遅いじゃないか」と突然いい出して、そしたら女の子はびっくりして、そしてまた「そうだよ、遅いよ」と首を切られたのがむこうから起きてくるし、また湯船からも「いらっしゃい」と出てきて、女の子たちは腰抜かしていましたよ。こんないたずらをするわけです。そして練習するわけです。みんな冗談だけど。

それから、「(沖縄)ジャンジャン」でもコンサートがすんで、ジャンジャンの社長とショッピングセンター内のおでん屋まで歩こうといって、内地のミュージシャンもいて、三越から平和通りまで歩いているうちに後ろから一人はもうすっぽんぽんになってるんですが、他の三人はわからないんですよ。

「おい」と合図したら、靴とって、ズボンとって、パンツとっていくわけです。それで肩を組みながら話しているから「そうだな、そうだな」と前見て歩いているので、タクシーの運ちゃんもみんな止まって見ているから「どうしたんだろう、まわりがみんな見ている」と思いながらも、本人はショッピングセンターに着くまでわからないわけです。それで、「おいっ、お前すっぽんぽんだったのか。いつすっぽんぽんなったの」と驚いているのですが、「いやいや、シンキがほらみんな持っているさ」といって、こういういたずらが好きなんです。

ですから「仕事お疲れさん。じゃ、今日はなんかビールでも。ビアホールに行ってビールでもやりましょう」というときには、肩を組みながら誰だから知らぬ間に裸になっているわけです。与那原とかそういうところでね。

だから、私はまだ正常なんですよ。

ドラマーとか、ベースとかギター、もうたいへん。考えられないぐらいこういう話がいくらでもあります。

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