“有志の会” の考察

今月17日、「辺野古新基地建設に反対し、沖縄の自治の底力を発揮する自治体議員有志の会」(以下有志の会)に関する記事が琉球新報と沖縄タイムスに掲載されていました。最高裁での県敗訴を受けて、市町村の1期生議員3人が発起人となり、「有志の会」を結成した流れですが、興味深いのが、沖縄2紙における「有志の会」に関する記事の扱いかたが非常に異なっている件です。

この案件においては17日の琉球新報が1面トップで記事を掲載、そして2面の関連記事では「一問一答」「解説」そして参加議員をすべて掲載したのに対し、沖縄タイムスでは2面に「解説記事」のみを掲載しており、“雑” な印象を受けます。そして面白いことに、沖縄タイムスでは「自己決定権」とのワードを注意深く避けて記事を作成していることと、解説記事には「有志の会」が結成された背景には「オール沖縄」勢力に対する不満が見え隠れすると言及した点です。

これだけ扱いが違うと、有志の会の会見でなにかあったのではと勘繰りたくなりますが、琉球新報の一問一答をチェックすると、気になる記述がありましたので、該当箇所をアップします。是非ご参照ください。

自治体議員有志の会 一問一答

沖縄のことは沖縄が決める / 市民に近い立場で

発起人の與那覇沙姫、仲宗根由美、多嘉山侑三の各氏と報道陣の主なやりとりは以下の通り。

‐今後の活動は。

與那覇氏 三つの行動指針で全体で共有し、ミーティングを重ねていく。具体的な議論はこれからだ。

‐辺野古新基地建設に反対する既存の政治勢力「オール沖縄」との関わりは。

‐多嘉山氏 私の認識では「オール沖縄会議」には共同代表もいて普段から市民団体と活動している。そして「オール沖縄」は辺野古新基地反対という一つの目標を持って選挙などの時に勢力が終結する集合体だ。私たちはその枠にとらわれない。あくまで自治体議員として地方自治の最前線で市民に最も近い立場として、地方自治の本旨を実現するという観点で取り組んでいく。

‐宣言にある「真の沖縄の自治の実現」とはどういうイメージか。

仲宗根氏 沖縄のことは沖縄が決めて、その結果に沖縄が責任を取るということが真の自治だ。これまで沖縄が自立しないように仕向けてきた歴史や仕組みがあった。そんな時代はもう私たちで終わりにしたい。

‐先島の自衛隊配備など辺野古新基地以外の動きにどう対応するのか。

多嘉山氏 辺野古新基地にかかわらず、地方自治に反して基地の計画が進められている地域が他にもある。今後、地方自治の観点からどうしていくのかを意見交換してアイデアを募りたい。(令和05年09月17日付琉球新報02面)

ここで太字の部分について解説する前に、「オール沖縄」について言及しておきますが、普天間基地の名護市辺野古への移設反対を掲げる、保革を超えて結集した政治勢力が「オール沖縄」であり、その団結を支えるための中核組織として「オール沖縄会議(2015年12月14日結成)」があり、プラス国政選挙等の大型選挙における選挙協力体制があります。

これらのシステムは翁長氏が亡くなるまでは極めてうまく作動していたのですが、令和に入ると首里城消失やコロナ禍、そして社会民主党の分裂などオール沖縄を支える政党の影響力低下(共産党除く)などが重なり、政治勢力としての「オール沖縄」の退潮は誰の目にも明らかな状態でした。そして今回の最高裁における県敗訴の結果、オール沖縄の求心力は加速度的に低下するのは避けられない状況になってしまいます。

ただし、玉城デニー知事の個人人気と選挙協力体制は健在なので、その結果、現在の「オール沖縄」は大型選挙を戦うための “互助勢力” に成り下がってしまっており、その件についての批判も多々ありますが、実はこれこそ「オール沖縄」が最も触れられたくない部分なのです。

それはつまり、「腹八分、腹六分」の政治勢力をまとめるために編み出したはずの選挙協力体制が、政治勢力の退潮に伴うにつれて、いつの間にか選挙協力体制を維持するために「オール沖縄」が存在するという “逆転現象” が起こっているのです。

多嘉山名護市議は記者会見の場で、ついうっかりその点に触れてしまったのです。

「有志の会」と「オール沖縄」とのかかわりについて、「オール沖縄」がこれまで沖縄の “民意” を示し続けてきた点を高く評価し、それを踏まえた上で「有志の会」としても「オール沖縄」との連携は最大限に対応していきたい等、相手を立てたコメントができなかった時点で、ハッキリ言って「有志の会」の先行きは不透明な状況です。沖縄タイムスの解説記事は以下の記述で〆てますが、ブログ主も同感です。

1期目の3氏を発起人に市町村議員の約16%が終結したインパクトは大きい。ただ、辺野古阻止で一大勢力を築いたオール沖縄との連携に、有志の会は「枠にとらわれず個々の議員の意思で参加する」との立場で、腹八分、腹六分でまとまってきた微妙なバランスを崩すのではないかといった疑問はつきまとう。(令和05年09月17日付沖縄タイムス02面)

ただし、玉城知事が「承認」を選択した時点で生じる「オール沖縄」の求心力低下の受け皿となるべく誕生した政治勢力なので、それなりに活動してもらわないと困ると思いつつ、しばらくは静観しようと決意したブログ主であります(終わり)。

 

 

SNSでもご購読できます。