コザの街エレジー(20) 最終話

基地の街には、今宵もまた、夕闇と共にネオンは輝き、ジャズが流れる……。

くわえ煙草で客を待つ女、道行く黒人に色眼を使う女、光をさけて街角で男の袖を引く女、ガム売りの女の子、物売りのオバサン達、その中をノッシ、ノッシと歩き回るパトロール、昨夜も、今宵も、そして又明暁も、基地という名の怪物のそれは生きのびんとするあがきだ。のたうつ怪物!

狂死した混血児の母親、自ら命を絶たねばならなかった或る女給、刹那の喜びにひたるハーニー族、はなやかなドレスの影にかくされた情〇、オフリミッツを死の宣告としておののく特飲業者、アメリカの犬に生れた方まだよかったとなげくあるメイドさん、帰らぬ異国の人を待ち続ける現代版お蝶婦人。悲しい現実。……。

人間模様描くコザ / エレジー奏でる基地の街

コザの街だけで青A320何軒、その他に赤A、スーベニヤ〔、〕理髪、映画館、いろいろな外人相手の営利業を考えるとき、基地なるが故に発展し、その故に喜び、その故に悲しむ。

中頭初青協の演説会を普天間で持とうとした時の特飲業者、商工人のやっきになっての阻止、帰省学生のデモを阻止したときの特飲業者のいきり立ち、基地のエレジーならずして何だろう。

〇…或る父親はこう云う。

子供を大学にやる為にバアを経営したり、パンパンに間借りをさせたりして金をためた。この子の為にと政治理念も捨てさりいいたい事もいわず金をためた〔。〕だが、金がたまったころには、息子はハシにも棒にもかからん男になっていた。何のために金をもうけたのかわからない……と。

〇…ゴヤあたりをうろつき歩く気狂い女が、人家の立ち並ぶ露路の暗がりで、堂々?と春をひさぐ…。勿論その外人さんは気狂い女と知らずにであろう。きっと酔った上での事、そうでなければ臭くて近寄りも出来まい。その狂女がある日コザ署に準現行犯でつかまった。あるバーの裏の暗がりでの事だったという。

コザ署でいう事が悲しい…

「ナゼ パン パン ハツカマエズニ 私ヲツカマエル?」「アメリカサンガ私ニ同情シテイルノヨ…」この現実、誰がおこれよう。誰が笑えよう…狂女の目にさえ、映じて消えぬ、この現実〔。〕航空隊では彼女の写真をはり出し、「この女気狂いです」と兵を戒めたそうな。

◎…この現実を知りながらも、久志は村をあげての軍誘致、金武、宜野座又然り。石川の如きはそのために、ドル交換所の補助金問題をめぐって市長不信任の動きさえ見せ、更に議員失格により補充選挙、ついで議会解散、総選挙にまで発展しそうな雲行き、タクシー協会脱退の動きもまた基地の島なるが故のエレジーの一つ。

◎…私こそほんとの親米派です〔。〕だから私以外のものは反米ですといった論法で、他人の失脚の上にアグラをかき、やがては兄弟互いにホコを向け合うようになった基地のエレジーは数えるときりがない。

◎…需用と供給に常にバランスをとらねば経済問題ならずとも破タンが来る〔。〕女給も新陳代謝の時が来たと聞く。終戦時、20代の若い娘たちも、10年経てば30代、畳と女は新しいのに限るとか、続々と女給のニューフェース、ニューハーニー、若い娘がドンドン生産される。ニューモードが出れば商品でさえ古い型は払下げ、年いった女給さんよ、ハーニーさんよ、いずこに行く……政府はこの問題の対策を考えねばなるまい。女給や、ハーニーのスクラップ集積所があと10年、いや5年もすれば必要となるだろう。

〇…基地の街でも夜は更ける。ネオンが1つ、又1つと消えていく。悲しい現実、みにくい現実、だが基地なるが故に落とされる㌦を考えてみよう。

それは莫大な数字になる……いかなる社会にも明暗はある。戦後13年、沖縄の復興に駐留軍の功績を忘れてはならない。そして暗い面をなくすることも我々のつとめだということを忘れてはなるまい。エレジーがハピーソングになって皆の口から高らかに歌われる日はいつのことだろう。(Y)

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