組織暴力団 – 火を吹く抗争 ⑤ 組織と武器

抗争が激化するにつれて、暴力団は銃器の確保に躍起となり、暴力団の武装化はますます強化されていく。短銃をしのばせ、連日連夜、車に分乗して走り回る旭琉会行動隊員。上原組、琉真組が相次いで本土広域暴力団・山口組系大平組と杯を交わし、アジトを構えたことから、抗争はエスカレートした。

3月4日の1回目の発砲事件以降、連続発生し、ついに上原一家の若い組員1人が射殺された。使われた短銃は米軍製のコルト45口径。「短銃1丁で組員10人に匹敵する」と言われるほど、暴力団にとって銃器は命より大切なもの。巨大な武器庫(米軍基地)を抱えているだけに、暴力団の武装化は想像以上のものがあり、その武器をねらって山口組が沖縄進出をうかがう。

想像以上の武装 / 専従班編成し押収へ

「暴力団を壊滅するには、3つの大筋がある。1つには資金源の封圧、2つには暴力団員の徹底逮捕、そして銃器の押収だ」(斉藤隆県警本部長談)。県警捜査二課はさる9日、各署の応援を得て武器捜査専従班を編成。武器の発見、押収を急ぐとともに、入手経路の解明に努めている。昭和47年以降、県警が押収した短銃は57丁、自動小銃や軽機関銃18丁、手投げ弾25個、実弾約3万発にものぼっている(52年5月23日現在)。

組織を守るための最高の武器が短銃だ。暴力団の勢力を図るバロメーターとさえ言われる。そのためか、逮捕された組員らは、こと短銃に関しては固く口を閉ざす。暴力団組織も短銃の隠し場所には細心の注意を払っており、入手経路や短銃の押収は困難を極めている。しかし、押収された銃器のほとんどが米国製。広大な米軍基地を抱える沖縄だけに、基地が供給源となっていることは明らか。捜査員の話によると「短銃は実弾付きで、1丁10万円前後で取引されている」という。

不良米兵が小遣い銭欲しさから、基地の軍用短銃を盗み出したり、自分の短銃を持ち出してホステスやボーイを通じて売る。あるいはブローカーの手を経て暴力団に流れる。さる3月23日、銃器の運び屋” グループが県警に逮捕され、大阪府警に護送された。このグループの首謀者は、バー街にたむろしている不良米兵と親しく、彼らから仕入れた短銃や軽機関銃を、本土暴力団に流していた。

そのほか、暴力団は前もって米兵と契約、基地内から大量に盗み出させるケースもある。昭和47年5月、キャンプ・ハンセンから盗まれたコルト45口径のうち、2丁は暴力団のアジトから発見された。

基地のほかに多いのが米軍人の住宅。基地内から盗むよりも侵入が容易で、しかも盗難届けはほとんどない。また海外旅行者や東南アジアから帰った船員らの手によって運び込まれるケースなど、その入手経路を断つことは困難を極めている。

一連の短銃発砲事件を捜査している県警捜査二課は、さる18日午前、旭琉会組員の自宅を家宅捜索した。ねらいは発砲事件に使用されたコルト45口径の発見。ところが部屋には、事件とは無関係のコルト22口径が隠されていた。(昭和52年5月24日付琉球新報11面)

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