史料 – 沖縄人民党綱領

今回は昭和22(1947)年11月15日、沖縄(民政府)知事志喜屋孝信宛に提出された、『政党に関する書類 – 沖縄人民党』 より沖縄人民党の綱領、政策について掲載します。沖縄県公文書館 – 琉球政府文書 – 政党に関する書類(1)結成届け、綱領、会計報告からの抜粋です。

『戦争と平和の谷間から』 浦崎康華著によると、試案は浦崎康華さんが作成し、昭和22年7月20日の新党結成大会において無修正で作成されたのこと。以前当ブログで掲載した、新沖縄建設大綱(私案)と比較すると実に興味深い内容です。共産主義的な要素があまり感じられないことに驚かれるかもしれません。読者の皆さん、是非ご参照ください。

沖縄人民党の綱領、政策、規約(1947年11月15日、沖縄県知事志喜屋孝信宛提出分)

沖縄人民党綱領

一 我が党は労働者、農民、漁民、俸給生活者及び中小商工業者等、勤労大衆の利害を代表し、ポツダム宣言の趣旨に則りあらゆる封建的保守反動と戦い、政治経済社会並びに文化の各分野に於て民主主義を確立し、自主沖縄の再建を期す。

(注)民主主義はイコール反ファシズム(枢軸国の政治体制)の意味で捉えたほうがいいでしょう。

一 わが党は公益事業の公営を図り中小私企業の新興と海外貿易の発展に依り沖縄経済の自立を期す。

一 わが党は人種、国籍、宗教による差別待遇を排除し、人権を尊重し、世界平和の確立を期す。

政策

A 政治

一、人民自治政府の樹立

(注)この項目が瀬長さんの終生の目標になります。

二、市町村会議員、市町村長、沖縄議会議員及び沖縄知事等人民による直接選挙の速やかなる実施。

(1949年5月13日提出分は、市町村会議員、市町村長→憲法議会の設置に変更)

三、棄権防止のため一切の選挙は日曜日又は祭日実施。投票場の最大限の増設。

(1949年5月13日提出分からは削除)

四、公職追放令の全面的適用

五、治安維持法、同警察法等一切の人民抑圧法令の廃止。法制改正委員会の創設による民主主義法令の制定。

(1949年5月13日提出分からは削除)

六、沖縄群島、大島諸島及び先島群島の統合。人口調整機関の設立。

七、言論、集会、出版、信仰、結社、街頭示威運動の完全なる自由。

八、官公吏の民主的監察制度の確立。

九、満18歳以上の男女に対する選挙権、被選挙権の附与。供託金制度の廃止。

十、労働者保護法の速やかなる制定。

十一、日本政府に対し戦争被害の賠償金優先全支払い要求。

B 経済

十二、手取賃金の引下げなしに又斬首なしに労働時間の短縮と土木工事、荒廃地の復旧事業等による失業者の完全雇用。

十三、企業の独占を排除し中小商工業の育成促進。

十四、航路、陸運、電気、鉱山、ガス、上下水道等公益事業の公営と其の民主的管理。

十五、勤労大衆に賦課する諸悪税の撤廃。

十六、給料賃金の引上と其の遅滞なき支払及諸給付制の改善。

十七、沖縄再建に要する凡ゆる生産財の日本よりの無償獲得。

十八、現地生産力拡充のため配給食料品の増配。

十九、土地の適正なる配分と耕作権の確立による生産の増強。

(注)所有権ではなく、耕作権の確立と記載されているところが目を引きます。

二十、農業組合を完全な生産農民の自主的組合とし土地並びに農産物処理其の他農器具、肥料、家畜、農産物供出等、農民自身による管理。

二一、水産組合を協同組合とし、沖縄水産業振興のため漁船、漁具の獲得並に漁港の改修増設。

(注)協同組合方式は、当時の瀬長さんがもっとも強調した部分でもあります。

二二、旧国有林並に旧県有林の有効なる管理造成。

二三、民主的金融委員会を設置しインフレ対策の確立。

二四、戦前の日本に対する公私債権の合理的処理。

二五、民主的審議会による財政政策の確立。

二六、肥料、種子、農器具、家畜等の積極的購入と農業の科学化。

二七、中央並に市町村に民主的食糧配給委員会を設置し、食糧の大衆管理と特配の廃止。

二八、労働組合、農民組合結成活動の自由と罷業権、団体交渉権の確立。

二九、世界労働組合連盟との提携。

C、社会

三十、住宅問題解決のため中央並に地方に住宅管理委員会の結成。

三一、一般夫人の地位を封建的遺凡より解放し完全なる男女同権の実現。

三二、孤児並に要●護者の救済。公営による託児所の普及。(●の部分は読み取ることができず)。

三三、失業保険、傷害、疾病保険等社会保険制の確立。

三四、民主的管理による医療の全面的公営断行と一般医従業者の待遇改善。

三五、婦人に対する有害並に危険労働の禁止。

三六、婦人労働者に対し妊娠の際賃金全額支給の上、十分なる休暇と休養。

三七、満16歳以下の少年の賃労働禁止。少年保護法の制定。

D、文化

三八、文化向上を期し、都市農民に等しく各種民主主義的文化施設の確立。

三九、沖縄に保持すべき伝統的文化の再建。

四十、軍国主義的、帝国主義的教育遺制の排除。民主主義教育制度の確立。教員再教育機関の設置。諸格好に於ける科学教育の普及。工業学校、職業学校、専門学校、大学の創設と教育費の全額公費負担。

四一、文化に対する官僚的干渉の廃止。脚本、検閲、俳優資格審査制の即時撤廃。

四二、海外の図書、新聞、雑誌其の他印刷物及印刷器具機械並に文化資材の移輸入促進。

四三、一般住民家庭に於ける照明の復活。

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