ロックとコザ(1994)川満勝弘(愛称:カッちゃん)編 – その19

Where’s Bank? (銀行はどこ) そうして、ロサンゼルスのオフィス街でようやく銀行を探し当てて入ったのはいいのですが、パジャマで黄色いサンダルを履いて米を買うつもりで出ていった奴らが、しかもカラジ(髪)もこんなしているヤナ・カーギー(長髪で変な風貌)ですから、警備員が入れてくれないわけです。

エディに「エツー、お前が銀行に行ってこい。ワッター(俺たち)二人で行ったらこいつ車持って逃げるよ。俺、ここで座っておくから、おまえ早く行ってドルに替えてこい」といわれてエツーが銀行に行ったんです。

そしたら、またこのエツーはフラー・ヤサ(バカだよ)。銀行に入ったのはいいんだけど、エレベーターがズラッと並んでいるわけですが、どこでもいいから適当にボタンを押して入っているわけです。これがバンミ・カシテいきなりズーッと上がっていってしまったので「ウレー・絶対・トゥマ・ラン・サー(これは絶対止まらないな)」と思っているうちにもう何十階に来ているわけです。それで「ここじゃないな」とまた一階まで降りて来て、「どこかなあ」とまたボタンを押して(別のエレベーターに)入ってまた違ったそうです。

そうして、そこら辺にいる人たちに「Where’s Bank? (銀行はどこ?)」と聞いたそうですが、あのオフィス街で、こんなカンター(髪型をした奴)では、アメリカ人は「また麻薬患者が入ってきたな」としか思わないから誰も相手にしません。ですから、どこでも断られてしまったらしく、しまいには自分で探さないといけないので、けっこう三つ四つのエレベーターに乗ったらしいんです。

その間も、車でエディが、車盗られないためにガソリンスタンドの人と一緒に変なもうこんな(話の通じない)話ばっかりしながら、「ウレー、ウッサッ・サー(あいつ遅いなあ)」と思いながら待っていたそうです。

エツーはというと、三〇分も銀行のエレベーターで上ったり下ったりしていたらしいのです。メンバーの中では、エツーの髪が一番長く、お尻の下までとどくほどだったので、これがサンダル履いてパジャマ姿で銀行に来て、円をドルに替えてちょうだいといっても誰が信じるの、やはりガードマンも警戒しますから、「そうじゃないですよ、悪い人じゃないんですよ」と疑いをはらして、やっと東洋人みたいなアメリカ人が前の方にいたので、「実はこうこうなんだけど」と理由を話したら「こっち」と教えてもらってやっとドルに替えたそうです。

こうして、二人が帰ってきたのはもう夜になっていました。

それで「イッター・ヤ・朝・ンジヤー・ニ、エー、マーンカイ・ンジャ・ナ(おまえたちは朝出て、どこまで行ってきたのか)。今日のレコーディングは、エー怒っているよディレクター」と私がいったら、「アラン、ジチェー・ヨー、ウング・トゥ・ナヤーナ・カイ・アング・トクゥ・ナヤーニ、ナー・デージ・ナトォータッ・サー(いや、実はあんななってこんななってもうたいへんだったんだよ)。でもよ、生きて帰ってきたさ、ワッター(俺たち)本当は死んでいたんだよ、カッちゃん」というんですよ。「何で死んでたわけ」と聞き返すと、「砂漠に出て、夜になって、ガソリンもない、食べ物もない、ハーッシェ(感嘆詞)電話もない。生きて帰ってきたんだよ僕ら。それだけでも最高じゃないか」というので、私も「ヤッサー・ヤー(そうだな)」と納得したんですが、一日のレコーディングのお金がただでなくなったことにディレクターは怒っているので、二人が「生きて帰ってきたさ」というのに、私も「ヤンドォー・ヤー(そうだよな)。生きて帰って来ているだ、ディレクター。偉いよ、さすがロックンローラー、大丈夫」とかなんとかいってごまかしてにでると、ディレクターが「違うの、カッちゃん僕がいいたいのはね」といってきたのですが、「いや、生きているよ。明日やりましょう、明日」といってごまかしました。

また、アメリカに、「水売ります、何ガロン」というものがあって、これにコインを入れて水をいくらって買えるのがあるわけです。それに二五セントを入れて水が出るのを待っていると、水がザーッと出て、ずっと何ガロンも、二〇リッターぐらい流れているんです。

私たちは「なんでこの水、もったいないな」、「壊れているんじゃないか、これ」、「何で止まらんのこれ」とか何とかいって水が流れるのをながめていたんですが、そのうち「これ、バッベー・イネー・テー(もしかして)入れ物は自分で持って来るんじゃないのか」と気づいたんです。

「ヤルハジ・ドォー、ウッサ・キー・ナー、エーもったいないウヌ・ミジュヨ、エー、ヌーガ・エー(そうだよ、こんなにたくさん、おいもったいないよこの水は、おい何で)」。「これはエー考えてみろ、あれ右の下、大きいサー・ヤー」、私たちはコーヒーの販売機で、コップがおっこちてコーヒーが出てくるみたいに考えていたので「入れる物は出てこないわけ?」という感じでしたから、最初は「アイ(あれ)、壊れているのかな」と思っていたんです。

ドワーッと出ているものですから、それであまりに恥ずかしいから、水も何も持たないで車の中に逃げて、そこから次の車が止まったんでそれを見ていたら、やっぱり入れ物を持っているんですよ。「やっぱり入れ物、これぐらいのバケツを持ってきて置くんだよ」とこういうことがわかったんです。

こういう話はいっぱいあるんです。とにかくロックミュージシャンは、みんなどこかおかしいんです。音楽的には今認められていますけどね、やっている本人はけっこうポッテ・カスー(まぬけ)が多いんですよ。

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