琉球・沖縄の歴史の個人的な謎 近代にいたるまで女性が文字を読めなかったこと 番外編その5

ユタ(イメージ)

ユタあるいはユタコーヤーの慣習は現代にも存続しています。その根底には現代人にも呪術に対する憧れと恐れの感情があるからです呪術的思考の克服は琉球王国(あるいは琉球藩)の時代であろうと現代であろうと至難の業で、氏育ちや学歴に関わらず呪術にどっぷりはまる人は珍しくありません。

なぜユタを信じるのか(友寄隆静著、月刊沖縄社、1981年刊行)で、著者は実際に14人の現役ユタにインタビューを試みています。そのなかで一番笑えないエピソードが「夏休みになると教師の予約でギッシリというくだりです。ユタは「看板のない商売」ですので、口コミあるいは紹介を経てウグァン(拝み)を依頼するのが一般的です。現代ではウグァン(拝み)のWeb予約もできますが、当時は口コミなど情報入手の手段は限られています。 それでも予約が殺到するところに沖縄社会のユタ問題の闇を感じます

ただし現代はユタに対して否定的な階層も存在します。代表的な例としてクリスチャンや創価学会など既存の宗教勢力がユタの権威を全面的に否定します。あと無宗教の民間人でもユタやユタコーヤー(ユタ買い)に否定的な人が数多くいます。理由は教育と医学の普及で、とくに医学の発達がユタの権威低下に大きく貢献します

*本物のユタは初対面でもユスガミを拝む人(クリスチャンのこと)を見抜くそうです。 

前々回の記事で説明した通り現代社会は内面の良心が保障されている社会ですので、ユタの権威を信じる人も否定する人も共存できます。それ故にユタやユタコーヤー(ユタ買い)の弊害が最小限に抑えられている社会環境と言ってもいいかもしれません。

琉球王国(あるいは琉球藩)の時代には、士族階級の男性は総じてユタの権威に否定的です。理由は前回の記事に述べた通り年少から儒学の教育を受けていたからです。ただし王国時代の士族の男性は人口に対する割合は多くありません。当時の大多数の人たちは文字が読めず無学の状態でしたので、その結果ユタの権威の暴走に歯止めがかからない状態でした。特に女性の心をしっかり捉えてその権威にどっぷりはまる状態が何百年も続いてしまったのです。(続く)

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