子孫までたたります

先日ブログ主は、ひさびさに沖縄県立図書館に出向いて新聞史料をチェックしたところ、またまたじわじわくる記事を複数発見しました。昭和48年当時の社会面を中心にアシバー関連のニュースを検索したところ、同年6月だけで18記事も印刷して持ち帰る羽目になりました。復帰前後の昭和の時代のすごさを痛感しつつ、持ち帰った史料からブログ主が厳選した記事を紹介します。

旭琉会関連のやらかしは後日改めて紹介するとして、今回は昭和の沖縄の裏面を象徴する “風俗” に関する内容です。記事本文に一部どぎつい表現がありますが、このあたりに昭和の時代のおおらかさを感じます。読者の皆さん、気合を入れてご参照ください。

子孫までたたります

18日から「性病予防週間」

「知っていますか梅毒は本人だけでなく子孫にまで悪い影響を与えます」。18日から1週間「性病予防週間」(主催沖縄県)が始まる。

いまなお売春があとをたたない沖縄はまた性病の多いことでも有名で大きな社会問題になっている。近年とくに性病が一般家庭や〔若年〕層にまで入り込み、性病問題は深刻な事態になっている。

こうしたことから県厚生部では性病予防に全力をあげることにしており、予防週間中は、性病はおそろしい病気であることを宣伝啓発するとともに、特にこれから結婚しようとする人や妊娠した婦人に対し血液検査をしなければならないことを呼びかけることにしている。(この場合の血液検査は無料)

なお、昭和46年6月現在の県下の梅毒患者数は8050人、リン病が56人、合計8061人で、これは老人から赤ん坊まで含めた県民125人に1人の割りで性病患者がいるというおどろくべき数字となっている

引用元:昭和48(1973)年6月9日付琉球新報夕刊3面

題字のインパクトが強烈ですが、それだけ当時の沖縄社会が性病の蔓延に悩まされた傍証と言えます。参考までに下記引用はもっと内容が強烈なのでご参照ください。

70人に1人が性病

きょうから性病予防週間

「性病は子孫にまで影響する恐ろしい病気です」18日から「性病予防週間」が始まった。きょうから性病予防週間

沖縄の性病患者数は昨年12月の統計によると、7715人(梅毒6846人、淋病816人)もいる。県厚生部予防課の話によると、届け出のない患者を含めると、実数はこの2倍を越すだろうといわれている。この計算でいくと

県下の老人から赤ん坊まで含めた約70人に1人の割りで性病患者がいる

という驚くべき実態だ。

復帰と同時に、沖縄にも売春法が適用されたことによって性病か潜在化し、若年層にまではびこっている。とくに、復帰後性病の実態がつかみにくくなり、治療など対策が十分にできなくなったため、県厚生部では各保健所と連絡をとりながら県民に性病の絶滅を訴えることにしている。また、本土では婚姻時と妊娠時の検査以外は有料になっているが、沖縄は性病に関するものは検診から治療まで全部保健所で無料で見ており、県ではこの無料制度をもっと活用してもらいたいと呼びかけている。

また、沖縄には他府県にない

性病Gメンが各保健所に1人ずつ(那覇、コザは2人)配置され、

直接住民の相談相手になっているが、こうした性病Gメンをもっと活用し性病をなくして明るい社会をつくろうと県民の理解と協力をうながしている。

引用元:昭和48(1973)年6月18日付琉球新報夕刊3面

記事中の “性病Gメン” の設置は有名な話で、売春防止法がないアメリカ世の時代にはそれなりに有効に活用されていました。性病患者に対する行政の手厚い保護政策もアメリカ世の裏面を象徴するといえますが、復帰後は防止法施行の反動で売春が潜在化し、かえって性病の実態がつかめない事態になります。

復帰後の売春取り締まりに関する記事を複数チェックすると、当時沖縄に進出した “トルコ風呂” が売春潜在化の温床になっていたことが分かります。そのことを象徴する記事を2つ紹介します。

トルコ経営者逮捕

那覇署 / 従業員に売春させる

那覇署防少課は10日午前1時ごろ、那覇市若狭町3の53、「トルコ前島」=比嘉盛光(37)経営=を営業条件違反容疑で手入れし、経営者を逮捕した。

同トルコは昨年10月から8カ月にわたり、女子従業員6人に売春をさせていたもので、個室の窓には内側からタオルがかけられて外から見えない完全な密室状態だったという。

また、女子従業員たちは、トルコの中では、マッサージ以外をやってはいけないことを知らず

「売春をやるのが当然だ」

と思っていたようだ。このようにトルコ内での売春は、なかば公然化しており、県警では、このような風潮を改めるため今後も厳しく違反トルコ業者の逮捕をすすめる方針だ。

引用元:昭和48年6月11日付琉球新報夕刊3面

記事中の “売春をやるのが当然だ” の件がじわじわきますが、これが当時のトルコ風呂の実態であって、この有様では県下に性病が蔓延するのも宜なるかなと思わざるを得ません。もうひとつの記事は一部表現が(現代では考えられないレベルで)どぎついです。ぜひご参照ください。

「美人トルコ」手入れ

県警 / 管理売春疑いで逮捕へ

県警防少課の売春取締犯は27日午後10時、那覇市久茂地1の6の4(ホテルサン沖縄向かい側)「美人トルコ」を売春の場所提供の疑いで家宅捜索、空気マットやゴム製品などの証拠品多数を押収した。

同トルコは復帰前の46年2月15日に認可を受け、開業していた。近くに大きな観光ホテル2軒を控え、客のほとんどが本土からの観光客で

県警、県庁のひざ元で堂々と売春をさせていた。

売春取締班が踏み込んだときは11人のホステスが2階と3階の12部屋でそれぞれ営業の準備をしている最中だった。また、すでに4部屋には客が入室していた。客の中には捜査員が踏み込んできたことにびっくり、頭をかかえて小さくなっていたが、それとは対照的にホステスらは悪びれた様子もなく取り調べに応じていた。各部屋は見通しのきかない個室になって、

部屋のチリかごには使用すみの多くのゴム製品がほうり込まれ、

売春をやっていることが一目りょうぜんだった。

一方、別動隊は同市牧志町2の14、同トルコ経営者、福原朝雄(37)宅を家宅捜索、帳簿などを押収、今後の調べで福原を管理売春の疑いで逮捕に踏み切る方針。

現在、沖縄には43軒のトルコが乱立しているが、そのほとんどがいかがわしい接客行為をしているといわれ、県警では形を変えた売春の温床になりつつあるトルコを徹底的に取り締まっていく考えだ。

引用元:昭和48(1973)年6月28日付琉球新報9面

表現のどぎつさもさることながら、

取り調べを受けるホステスさんの写真を掲載していいわけ???

と、現代人のブログ主は当時の報道センスに驚愕した次第であります。(終わり)