組織暴力団 – 火を吹く抗争 ④ 山口組進出のねらい

山口組の沖縄進出のネライは何だろうか。短銃などの武器貯蔵庫とか、覚せい剤や麻薬の密売や密輸ルートとしてなど、いろいろ取りざたされている。だが、本当のところは県警も、山口組を迎え撃つ旭琉会さえもつかんでいないようだ。

武器貯蔵庫としての沖縄は本土暴力団にとって確かに食指の動くところ。武器庫としての沖縄は復帰前から本土広域暴力団の目をつけるところで、山口組が何度か旗揚げを図る動きをみせていた。銃器類に世界一厳しい取り締まりを実施している日本では銃器類の入手は非常にむつかしい。このため本土暴力団の間では改造けん銃が主流を占めている。ところが改造けん銃は精度が悪いうえ、暴発の危険性をはらむシロモノが多く、事故も絶えない。

魅力ある武器庫 / 麻薬ルートの確保も?

それに比べ、沖縄の暴力団は威力、精度とも抜群の実戦用米軍短銃が豊富に手に入り、武器にはことかかない。しかも、短銃だけでなく、手投げ弾から突撃用のマシンガン、軽機関銃まで容易に手に入る。短銃1丁が組員10人に匹敵するとまで言われるだけに本土暴力団にとって武器庫としての沖縄は魅力がある。沖縄の暴力団はこの魅力ある市場を利用し本土暴力団に豊富な武器を商品化して資金源に充てている。

四代目の跡目問題で内紛する山口組としては各派とも武器弾薬がほしい。沖縄を系列化して武器弾薬を定期ルートで調達できれば、優位に立てることになるわけだ。「だから大平組は沖縄の上原組や琉真会を系列化したのだ」との見方をする県警の捜査員も多い。しかし、現在のところ、上原組にしろ琉真会にしろ力で勝る旭琉会に一方的に押しまくられ、武器調達どころではないのが現状だ。

もうひとつ山口組のネライとして考えられるのは覚せい剤や麻薬の密売および密輸入ルートを確保することだ。県警のこれまでの麻薬取り締まりで地元暴力団がクスリに手を染めたという事例はない。覚せい剤など取ってみると復帰後、2~3件の事犯で暴力団員が関係していたことはあった。しかし、組織として麻薬に手をだしているという情報はない。

全国一と言われる麻薬汚染地域の沖縄で不思議といえば不思議だが、地元の暴力団はクスリに手を汚していないのは事実のようだ。そう言う意味で沖縄は処女地とも言えよう。そこに本土暴力団の魅力がある。覚せい剤など麻薬が組織の主な資金源になっている現状ではなおさらだ。

これらの見方とは逆に県警内部には「山口組は沖縄に進出するつもりは、本当のところはない」と見る捜査員もいる。その理由として沖縄の土着暴力団、旭琉会などと血を流してまで進出しても、そのメリットがないと言う。県警の未確認情報によると山口組は対立抗争する旭琉会と上原組の間に立って手打ち(仲裁)役を申し入れた。いわゆる手打ち料かせぎだ。一説によると山口組が30数億円を旭琉会に要求したが、旭琉会側がにべもなく断ったと言う。

ことの真偽はわかっていないが、いずれにせよ山口組が全国制覇の野望を抱いて日夜、その勢力拡張にやっきとなっているのは事実。お家騒動があるからとか沖縄進出のメリットがないからなどと言う楽観ムードに県警がひたっていると沖縄での暴力団抗争事件が本土広域暴力団をも巻き込み、取り返しのつかない結果を招くことにもなる。19日の大平組の来沖にみられるようにその兆しはすでに出始めている。(昭和52年5月23日付琉球新報9面)

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