組織暴力団 – 火を吹く抗争 ⑦ 資金源〈下〉

ゆすり、たかり、ヒモ、バクチなどのほか資金源として有名なのがナワ張り料。しかし、ナワ張り料についても警察は、その実態をよくつかんでいない。警察のある幹部は「確かにナワ張り料を徴収していると思う。しかし、被害者からの訴えは全くない」と言う。

ところが逮捕されてくる暴力団の中には「あそこのシマはオレが取りしきっていた。一軒の店から月2~3万、合計すると月に数10万円もあった」とうそぶく。警察が当の店に調べに行くと「何かの間違いでしょう」と取りつくしまもない。ネオン街では「ナワ張り料のようなものを支払っているところもあるだろうが、わかるような気がする。警察がいつまでも守ってくれるわけはないし、ビール1本で1日中、柄の悪い客にねばられただけでもう終わりだからネ。それを考えるとナワ張り料か何か知らないが、1~2万円と言う金は安いもんですヨ」と言う声が圧倒的に多かった。

財界の一部とも関係 / 実態つかめぬナワ張り料

那覇市内のある遊技場経営者は「私のところはもちろん、私の知っている限りでは暴力団にナワ張り料なんか支払っている店はないと思う。映画の見過ぎですヨ」と笑った。「暴力団は社会のダニ、われわれが血のにじむようにしてかせいだ金を彼らに貢ぐと言うバカはいませんヨ」と断言した本人が、抗争事件で殺された暴力団幹部の葬式に高級車を乗りつけているのを県警捜査二課が確認している。その他、暴力団は財界の一部とも深いつながりがあるようだ。その裏付けとして債権取り立てに暴力団を利用していると言う。「どうせ、取れない金だ。半分は暴力団にくれても金が入るだけいい」とばかりに暴力団に借金の取りたてを依頼する。余力のある人は暴力団を金の力でたくみにあやつり、金に困っている弱い庶民が暴力団の前に泣いている。

これらの非合法な手段による資金かせぎだけでなく、最近は暴力団の合法企業への進出が著しい。自分の愛人に飲み屋を経営させるやり方は以前からあって、暴力団の合法的な資金集め、いわば古典的な部類に入る。最近では、タクシー会社などを乗っ取ったり、遊技場を経営したり、養マンまで手を出しているという。むろん、企業の名義は暴力団でない別人を仕立てあげている。

ひところ、合法的な暴力団の金もうけといえば、おしぼり、氷、飲み屋でのスピード写真などに限られていた。ある捜査員は「近ごろの暴力団はかしこくなったと言うか、金もうけが上手になったと言うのか。とにかく経営コンサルタントを置いているとしか考えられないほど合法的な企業に進出している」と舌をまいている。

地元暴力団はまだ覚せい剤などには手を染めていないが、「攻勢をかけている本土との対抗上、資金繰りに困り、やがてクスリにも手を出すのでは」と県警捜査二課では警戒している。(昭和52年5月26日付琉球新報9面)

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