社会の公器として

今月12日に発覚した沖縄タイムス社社員らの持続化給付金の不正申請事件に非常な興味を覚えたブログ主は、ためしに同社がこの事件をどのように報道するかを逐一チェックしてみました。

非常な興味を覚えた理由は、社員の反社会的行為により社長はじめ経営陣が公式謝罪に追い込まれたケースなんて今まで聞いたことないからです。ブログ主が単に知らなかっただけなのか、それとも本当に今回が初めてなのかは不明ですが、ともかく同社始まって以来の異常事態であることは間違いありません。

まず今回の不祥事に対する沖縄タイムスの対応は、ここまでは合格点で、”営利企業” として標準的なトラブルシューティングの手順を踏んでいます。つまり、事件発覚後にすばやく情報収集をおこない、その結果を公表して謝罪、そして今後の対応について言及したあたりはさすがです

そしてこの案件に対して、社員たちが沈黙を守っていることもポイント高いです。13日の公式記者会見および武富社長の謝罪全文を公式見解として、それ以上の余計な言及は徹底的に避けています。13日以降の記事を細かくチェックすると、第三者の目線から自社の不祥事に言及してますが、この作業はハッキリ言って精神的にキツいはずです。にもかかわらず自制に徹している編集局員たちの忍耐は素直にすごいと思わざるを得ません。

つまりここまでの流れは問題なしで、あとは(購読者を含む)世間が納得する処分および再発防止策を講じる必要があります。ただし沖縄タイムス社は通常の営利企業とは違い、社会の公器としての側面を持ち合わせています。すなわち今後公表する再発防止策等は、ありきたりな内容では世間、特に購読者は納得しません。

そのヒントとなる記事が同月10日に掲載されていましたので全文を紹介します。ぜひご参照ください。

旭琉會トップに賠償命令

那覇地裁 / 特殊詐欺で弁護団訴訟

警察官や金融庁職員を装ったとして沖縄弁護士会の有志21人が弁護団を結成し、指定暴力団旭琉會トップの花城松一会長代行に約1030万の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、那覇地裁であった。山口和宏裁判長は暴力団対策法(暴対法)上の責任を負うと認定し、被害者側に約310万円を支払うよう命じた。

暴対法は、指定暴力団の組員が威力を利用した資金獲得行為で他人の生命や身体、財産を侵害した場合、トップらが損害賠償責任を負うと規定する。特殊詐欺で暴力団トップに暴対法上の責任を適用したのは水戸地裁などであるが、県内では初めて。判決により被害者救済の新たな道筋が開かれる可能性があるほか、反社会的勢力の資金源を断つことなどが見込まれる。判決後、取材に応じた宮里猛弁護団長は「実行犯は末端組員でも暴力団トップに賠償を認めたことで、今後の犯罪抑止につながる。今後も特殊詐欺を繰り返すようであれば裁判に訴えていきたい」と話した。

判決によると、組員らは被害者2人から計約260万円を不法に搾取。原告側は被害額に加え約300万円の慰謝料などを求めたが、慰謝料は被害額の1割が相当とした。(令和2年9月10日付沖縄タイムス25面)

旭琉會の場合は、暴対法の規定と過去の判例により、同組員の特殊詐欺行為に対してトップが責任を取る羽目になりましたが、この事例は金融詐欺の防止に極めて有効だと考えられます。もちろん沖縄タイムス社は指定暴力団でも反社会的組織でもありませんが、所属社員の反社会的行為を防止する観点からも経営陣、特に社長に対して厳しい処分を下すべきです。それが結果的に世間が納得する “厳正な処分” になると確信します。

ちなみに沖縄タイムスを含む既存マスコミは、政治家の不祥事に対しては “任命責任” を主張するのが常ではありませんか。今回の不祥事では最低でも社長、それと40代男性社員が所属していた総務部のトップに対して厳しい使用者責任を課すのが筋です。いやしくも “社会の公器” あるいは “公正と正義” を唱えるなら、”隗より始めよ” の精神で処分および再発防止策を講ずることを切望します。

最後に、権力の監視が既存マスコミのお題目ですが、

自社内の権力の監視は行わず沈黙を貫く沖縄タイムス社員たちに、果たして政治権力を監視する資格はあるのか

と余計な一言を添えて今回の記事を終えます。

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