衆議院解散におびえる人たち

いまさらですが、前日(9月18日)の沖縄タイムスに巷で話題の10月衆議院解散に関する社説が掲載されていました。全文を掲載しますのでご参照ください。

臨時国会冒頭解散? 首相の解散権に縛りを

国会に解散風が吹き始めた。今回は風だけに終わりそうにない気配である。

安倍晋三首相が今月28日召集の臨時国会の速い段階で、衆院の解散を検討する意向を与党幹部に伝えていたことがわかったからだ。臨時国会冒頭での解散も選択肢に入っているようだ。

自民、公明は具体的な選挙日程をすでに想定している。冒頭解散だと、「10月10日公示、22日投開票」「同17日公示、22日投開票」「同17日公示、29日投開票」 – の2案。

10月22日投開票の衆院2補欠選挙(青森4区、新潟5区、愛媛3区)後だと、「11月解散 – 12月総選挙」をいれているという。

なぜ、いま解散なのか。国民に信を問う大義名分は何なのか。いずれも疑問だ。

北朝鮮が日本上空を越える弾道ミサイルの発射を繰り返し、核実験を強行するなど東アジアの緊張が高まる一方の中で、政治空白をつくっていいのか。

安倍首相の念頭になるのは、代表が代わったばかりの民進党から離党者が続出し、小池百合子東京都知事の側近らが年内設立を目指す新党もまだ態勢を整えていないことや、東京都議選で自民が惨敗してから安倍内閣の低支持率が底を打ち回復傾向にあること、などであろう。

今のタイミングで解散すれば、選挙戦を有利に戦えるとの読みだ。

だが国民が納得できる解散の理由は見当たらない。身勝手の極みであり、解散権の乱用というほかはない。

憲法には解散に関する条文は二つしかなく、解散権を明示した規定はない。

内閣不信任決議案が可決された場合の69条に基づく解散と、天皇の国事行為を定めた7条に基づく解散である。7条に基づくが実際は首相による解散である。

最近の解散はすべて7条解散であるが、ドイツや英国では憲法などで首相が自由に議会を解散できることを縛る規定がある。首相が自由に議会を解散できるという考えは説得力を失いつつあるのが先進国の潮流なのである。

解散権については「内閣の一方的な都合や党利戦略で行われる解散は、不当である」(芦部信喜『憲法』)、「必然性が全然ないのに政権党の党利戦略で解散するなどのことは許されない」(浦辺法穂『憲法学教室』)というのが憲法学会の通説だ。

首相に解散権を無制限に与えたものではないのである。解散の大義名分が問われるのはそのためだ。

野党4党は今年6月、憲法の規定に基づき、臨時国会召集の要求書を衆参両院に提出した。安倍政権はこれを拒否し続けた。自民党が2012年に決定した「憲法改正草案」には「要求から20日以内の召集」を明記しているにもかかわらずだ。

3ヶ月もたってようやく臨時国会が召集され、その途端に衆院が解散されることになれば「横暴」のそしりは免れないだろう。

「加計学園」など疑惑の3点セットを帳消しにする狙いがあるとみるしかない。党利戦略の解散は認められない。

まぁ、いろいろ突っ込みたい部分はありますが、上記社説を読み終わった感想は「びびっている」の一言です。ネット上では既出ですが、7月の段階では野党の皆さんは「解散上等」のコメントを発表しています。

時事ドットコム 2017年7月6日17時32分 蓮舫氏「解散に追い込む」 = 社民幹事長も同調

民進党の蓮舫代表は6日の記者会見で、自民党が東京都議選で惨敗したことを受け、「解散・総選挙はいつでも受けて立つ。(衆院解散)追い込みたい」と述べた。社民党の又市幹事長も同日の会見で、「内閣改造でごまかそうとしているが、解散・総選挙を打たざるを得ないところに追い込むことが大事だ」と強調した。

https://www.jiji.com/sp/article?k=2017070600981&g=pol

【参考】民主党オフィシャルサイト – 連舫代表定例記者会見2017年7月6日

【蓮舫代表】(民主党オフィシャルサイト – 連舫代表定例記者会見より抜粋、時事ドットコムの記事はこの部分のことかと)

いやいや、解散・総選挙はいつでも受けて立ちますし、我々は追い込みたいと思っていますし、どんなことがあっても国民の皆様方が、今、都民の声を通じて聞く限りでは、安倍総理に対しては拒絶感です。この拒絶感は、しっかり国政で我が党が代弁をする、責任を問うべきだと思っています

https://www.minshin.or.jp/article/112266

ちなみに民進党の松野頼久国会対策委員長は9月19日の取材で次のように述べています。

松野頼久国会対策委員長は19日、自民党の森山国会対策委員長と国会内で会談した。終了後に記者団の取材に応じた松野国対委員長は、「報道されているような冒頭解散なるものが行われることは断じて許すことができないと申し上げてきた。もちろん解散は結構だが、われわれ民進党としても代表選挙があり新代表が選出されて、まったく発言の機会も与えられずにそのまま解散する、大臣にしても1回も答弁しないままに解散するということはやはり議会としては許せないということを申し上げてきた」と報告した。衆議院を解散する前提として、「せめて、代表質問、予算委員会、できれば党首討論くらいまではしっかりとやってから国民に信を問うということにしていただきたい」と自民党に要望したと説明した。

【参考】衆院解散前の代表質問、予算委、党首討論の開催を自民に要請 松野国対委員長

https://www.minshin.or.jp/article/112587/%E8%A1%86%E9%99%A2%E8%A7%A3%E6%95%A3%E5%89%8D%E3%81%AE%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E8%B3%AA%E5%95%8F%E3%80%81%E4%BA%88%E7%AE%97%E5%A7%94%E3%80%81%E5%85%9A%E9%A6%96%E8%A8%8E%E8%AB%96%E3%81%AE%E9%96%8B%E5%82%AC%E3%82%92%E8%87%AA%E6%B0%91%E3%81%AB%E8%A6%81%E8%AB%8B%E3%80%80%E6%9D%BE%E9%87%8E%E5%9B%BD%E5%AF%BE%E5%A7%94%E5%93%A1%E9%95%B7

常に思うことですが、我が日本国には何時になったら「信頼できる野党」が成立するのでしょうかね。今回の10月解散説における野党や既存マスコミの動きは「相手が本当に反撃してくる」ことを想定せずに、無遠慮で安倍内閣をスキャンダルで追い込もうとしてこのような無様な有様を世間にさらしているとしか思えません。

いまから8年前の平成21年(2009)の麻生内閣のときの既存マスコミの論調は「早期解散で国民に信を問え」の一点張りでした。現在では憲法解釈まで持ち出して解散阻止をもくろむのはいったいどういうつもりでしょうか。ケンカが下手くその分際で怒らしてはいけない人を本気にさせて窮地に陥ることを世間一般では「みっともない」と言いますが、どうやら沖縄タイムスではそのように考えてはいないようです。これが世間とマスコミの意識のズレでしょうか(終わり)。

SNSでもご購読できます。