辺野古訴訟 県敗訴の考察

既にご存じの読者もいらっしゃると思われますが、普天間基地の名護市辺野古移設に関して、県が国を訴えている「是正の指示」訴訟は、最高裁第一小法廷は4日、是正指示を適法とした福岡高裁那覇支部の判決を維持し、県の上告を棄却しました。

この案件は先月末にも関連記事が新聞紙上をにぎわしており、8月26日付沖縄タイムスにて、簡潔ながら経緯が極めてよくまとめられいる社説が掲載されていました。つまり「こうなること」はすでに予想されていたのです。

ちなみに沖縄タイムス社説『辺野古 県敗訴へ』から経緯について引用をご参照ください。

名護市辺野古の新基地建設を巡って、県が国を訴えている「是正の指示」訴訟は、上告審で県の敗訴が確定する見通しとなった。

最高裁判決は9月4日に言い渡される。県にとって想定の範囲内と言えるが、辺野古反対の姿勢を堅持しながら新たな展望を切り開くのは容易でない。

ここに至る国と県の対立の経過はこうだ。

大浦湾の海底に広がる軟弱地盤の改良工事は、工期、工法、工費などあらゆる面で計画の大幅変更を伴う。

米軍普天間飛行場の返還と危険性除去が大幅に遅れるだけでなく、環境への影響も懸念される。このため県は防衛相の設計変更申請を「不承認」とした。

防衛相の不服審査請求を受け国土交通省は、知事の不承認を取り消す「裁決」と、設計変更申請の承認を求める「是正指示」を出した。

県は、国の違法な関与だとして国交省の「裁決」と「是正指示」をいずれも取り消すよう求め、二つの裁判を提起した。これに対し、福岡高裁那覇支部はいずれの訴訟も県側の訴えを退けた。

最高裁は8月24日、「裁決」の訴訟については県の上告を退けた。

「是正指示」訴訟については、高裁判決の変更に必要な弁論を開かないため、福岡高裁那覇支部の結論が維持される見通しだ。

そして、その後の知事の対応について3つのパターンを想定しています。

敗訴した場合、県は設計変更を承認するのか、それとも問題点を精査し別件を理由に不承認の姿勢を維持し続けるのか。

敗訴してもなお指示に従わず不承認の姿勢を貫いた場合、国は「代執行」に向けた手続きを進めるはずだ。

徹底抗戦の構えを貫くことで反対派市民から評価され全国的な注目を集める半面「最高裁の判決に従わない知事」への反発も噴き出すだろう。

判決を受け入れ、地盤改良工事を認めた場合、国は県のお墨付きを得て工事を進めることになり、反対運動は深刻な打撃を受ける。

もう一つの選択肢として考えられるのは、知事を辞職し辺野古問題や沖縄要塞化の動きを争点として民意を問うことだ。

どちらを選ぶにしても県内の政治に与える影響は大きく、しかも決断の時期は目の前に迫っている。

ただし、バスケW杯後の9月5日のタイムス紙によると、知事選択肢が一部変更され、大雑把にまとめると、

① 9月中旬の国連演説前までに、「承認」

② 9月中旬の国連演説前までに、新たな理由で不承認。そして訴訟に発展?

③ 判断示さず、国が代執行手続きを行う?

になっており、県知事選で民意を問う選択肢がなくなっています。それはおそらく、平成30年(2018)の沖縄市長選にて、沖縄アリーナ建設に対し “慎重” な態度で諸見里宏美候補(現市議)を応援した過去が蒸し返されて、現職知事が選挙に負ける可能性が否定できないために外されたと思われます。

今回の最高裁の判断に対する報道をチェックすると、事前に想定された内容のため、沖縄タイムス・琉球新報ともに冷静な紙面編集に徹した感があります。辺野古新基地建設反対運動の活動家たちによる “お気持ち表明” や識者たちの論説主旨もほぼ予想通りであり、(活動家たちによる)SNS上の悲痛なつぶやきに比べると(紙面編成は)どこか落ち着いた感じを受けました。

最も目についたのが、沖縄の気持ちを汲み取ってない、地方自治軽視だ、形式論過ぎる、日本の民主主義の危機云々と、勇ましい言葉で最高裁の判断を批判する論調ばかり掲載されているのですが、「だから、このような不当な判断を知事は断じて受け入れるべきではない」とハッキリ言いきった言論は(ブログ主がチェックした限りSNSも含めて)一つも見当たらなかった件です。

そしてもう一つ気になった点が、9月5日から7日の3日間の「読者の声欄」に最高裁案件に関する読者の投稿が掲載されていなかったことです。(8日付沖縄タイムスには2件掲載されていました)。それはつまり、ブログ主の独断ですが、沖縄2紙、そして活動家たちは、最高裁の判断の重さを十分理解しているがゆえに

内心はあきらめているのです。

そして、先の見えない努力をするのは正直耐えがたいので、知事に早く “決断” してほしいというが本音であり、その “決断” は沖縄県知事の立場からすれば「最高裁の判断を受け入れる」ことに他なりません。

ちなみに一番最悪なパターンは、「判決を受け入れ、地盤改良工事を認めた場合」に想定される身内から「公約違反」の誹りを恐れて、判断を先延ばしにすることで国が代執行手続きに入ることです。その場合は「最高裁の判断に従わない県知事」のレッテルが貼られることになり、一部の支持者を除いて、世間からごうごうたる非難を浴びること間違いないでしょう。ハッキリいって「県政史上の大汚点」として後世から評価されます。

おそらく、知事および県のハラは決まっており、あとは発表のタイミング待ちです。

「なにもできない」ことが最大のセールスポイントである玉城知事が県政史上に残る “決断” を下す役割を担う羽目になるとは……

しかも、バスケW杯の成功でオキナワンロックの没落が決定的になったのと軌を一にして、辺野古新基地反対運動も終焉に向かうとは、誰も予想しなかったはずです。我々沖縄県民は歴史の大転換期を目の当たりにしていると確信して今回の記事を終えます。

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