琉球新報は何事を為したる乎 (全3回)

琉球新報は何事を為したる乎 – その3

●琉球新報は何事を為したる乎(承前)

◎教育に関しては前項にも述べたる通り、我輩は多く専門家に譲り、只其結果として社会に出現したる弊害に就ては随時酷と思ふ程の批評をなしたること往々これあり。その要点を一二挙ぐれば本県の教育家が外観(ミエ)を張る為めに不相当の設備をなして民力を顧みざりしこと、教育の方法が社会の要求に副はざるもの多きこと、教育家に死法に拘泥して活知識に乏しきもの多き事にして、直言の為めその反目を受けたることまゝありき。然れども諸君我輩は教育に重きを置けばこそ苦言も呈するなれ、我輩が常に教育家に向かって相当の尊敬を払ひ、鄭重の待遇をなすを見ば教育家諸君は当に我輩の微衷を諒察せらるべし。

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琉球新報は何事を為したる乎 – その2

●琉球新報は何事を為したる乎(二)

◎一般教育に関する特別の注文は曾て本紙上に縷陳(るちん=縷述)したるもの多し。然れども差当り切に希望するものは日本国民としてのコンモンセンスの中にも最もコンモン(普通)なる感覚の養成也。此(の)感覚は本県は他府県と大に異なる所あり。而して之を一致せしめざれば感情の融和到底望むべからず。感情融和せずして国民たるの実を全ふせしむることは是れ亦(また)到底期すべからざるの事也。本県に於て国民教育の基礎となるべき知識を注入するは先づ他府県と其感覚を一致せしむるにあり。他府県と一致せざる所の感覚とは大略左の如し。

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琉球新報は何事を為したる乎 – その1

●琉球新報は何事を為したる乎(一)

◎新聞紙が文明の社会に於て重要欠くべからざる一機関たることは世間既に定論あり。我輩が今更喋々するの要なかるべし。然して本県の旧社会が殆んど解体して新社会未だ建設せられず万事草々人々相率ゐて以て暴乱暗黒の谷底に陥らんとする時本紙は時代の要求に応じ特別の使命を帯て生れたり。時は明治二十六年九月十五日、場所は那覇区字西の借屋なりき。

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