すこし前の話ですが首里城内御内原エリアが無料開放されていた時期に、”銭蔵(ぜにくら)”と呼ばれる場所で”琉球泡盛の粋 in 銭蔵”と題した泡盛に関するパネルが提示されていました。せっかくなのでブログ主でパネルを撮影して書き写しました。読者の皆さん是非ご参照ください。
実は書き写した理由の一つにパネル内の誤字脱字が予想以上に目立ったことがあります。この手のイベント用パネルでは極めて珍しいのですが、それだけ泡盛業界に元気がないことの傍証でしょうか。誤字脱字の部分はブログ主で訂正しました。
首里城公園 御内原エリア等開演 プレオープンの告知サイトより抜粋
琉球泡盛の粋 in 銭蔵
かつて王府が泡盛を貯蔵したとされる銭蔵(ぜにくら)を会場に、泡盛の歴史や楽しみ方を紹介するパネルを展示します。
[日程] 平成31年1月27日(日)~ 2月3日(日)
[場所] 銭蔵
[時間] 10:00 ~ 17:00
*現在サイトは閉鎖しています。
・銭蔵(ぜにくら)の展示コーナーです。
・泡盛の歴史等についての展示パネルを撮影しました。書き写し文と合わせてご参照ください。
琉球泡盛の定義 ~黒麹の源流は沖縄にあり~
黄麹や白麹が使われる日本酒や焼酎に対し、泡盛に使われるのは 100% 黒麹菌(くろこうじきん)のみ。また、主にタイ米を原料とするのも泡盛の大きな特徴といえます。黒麹を使って原料のタイ米を米麹にし、それに水と酵母を加えてもろみにして2週間ほど発酵させるシンプルな工程は「全麹仕込み」と呼ばれ、これも泡盛独特のものです。また、泡盛のもろみの蒸留は原料の風味をあますところなく蒸留酒に凝縮させる「単式蒸留機」と定められています。そして沖縄で製造したものだけを「琉球泡盛」としています。このこだわりの数々が、沖縄が世界に誇る泡盛の独特の味わいや香りにつながっています。
琉球あわもりについて ~芳醇な香りとコク国内最古の蒸留酒~
Q1. 「泡盛」とはどんなお酒なの?
泡盛は日本最古の蒸留酒として約 600 年の歴史を誇り、九州の焼酎の源流も沖縄の泡盛にあるとされています。泡盛は原料のタイ米すべてを沖縄県原産の黒麹菌で米麹にし、水と泡盛酵母を加えて発酵させます。これを全麹仕込みといい、焼酎のような 2 次仕込みはありません。黒麹菌のみの酒造りを行っている地域は、世界的に見ても非常に珍しく、沖縄だけだといわれています。黒麹菌は他の麹菌に比べて雑菌による腐敗を抑える特徴があり、温暖で多湿な亜熱帯の気候風土に適しているのだとか。麹菌ひとつにも先人の知恵を感じますね。蒸留方法も焼酎とは違い、単式蒸留機で常温蒸留するのがメイン。単式蒸留機はもろみに含まれる成分を程よく蒸気に含ませて、原料の風味や個性をより多く引き出すことができるという特徴があります。さらに古酒として飲む楽しみを持つ泡盛は、中に含まれている成分を可能な限り残すため、簡易ろ過という軽めのろ過方法を採用しています。年月の経過でコクやまろやかさを増す古酒に育てる楽しみそれも泡盛の大きな魅力です。
Q2. 泡盛という名の由来
沖縄の方言で昔から「サキ」と呼ばれる泡盛。親しみを込めた通称「シマー」とも呼ばれています。約 600 年の歴史がある泡盛ですが、一体いつ頃から「泡盛」という名前が付けられたのでしょうか、「泡盛」という名称が文献に登場するのは、1671 年のこと。その年、琉球王国の尚貞王から四代目将軍徳川家綱へ送られた献上品の目録に「泡盛」の記録が残っており、これが泡盛という名前の初お目見えといわれています。名前の由来については、昔はタイ米ではなく粟を材料にしていたことから、粟盛⇒泡盛になったという説、古代インド語のサンスクリット語で酒のことをアワムリということから、それが伝来して泡盛となった説、薩摩藩が徳川幕府に献上品として泡盛を贈る際、九州の焼酎と区別するために名前を付けたという説、アルコール分の強さを計るために泡を立てたことから、泡を立てる⇒泡を盛る⇒泡盛という説など諸説あります。また泡盛は、江戸時代には薬としてさまざまな効能があるとして、とても重宝されていたことを語る文献も発見されています。
琉球あわもりの歴史 ~600 年の歴史が育んだ琉球の宝は今、世界の銘酒に~
Q3. 泡盛の歴史
薩摩の島津家に残る記録によれば、泡盛は 15 世紀末にはすでに琉球で造られていたと推定され、泡盛の歴史が約 600 年という根拠になっています。歴史研究家の東恩納寛惇氏が 1933 年にタイを訪れた際、現地のラオ・オンという地酒が泡盛と同じ味だったことから、かつては泡盛のルーツはタイ説が一般的でした。しかし、1990 年にアジア各国で行った調査で、中国に米を材料として酒があり、泡を盛って酒の出来を判断する習慣、蒸留方法などから泡盛との類似性が見られたことで、中国・福建ルートが浮上。中国と琉球の親しい交易の歴史からもその説は容易に推測できるとし、現在では、東南アジアと福建の 2 つの道を通って琉球に蒸留酒製造の技術が伝わってきたと考えられています。
新井白石の泡盛 7 年古酒説
1609 年の薩摩の侵攻以降、琉球国は薩摩藩の命で徳川幕府へ 18 回にわたり、「江戸上り」と称して総勢百数十人の使節を派遣。徳川幕府に使える儒学者、新井白石は、中国の衣装と楽器を奏でながら練り歩く江戸上りの一行を興味津々で迎えた一人で、琉球のことをまとめた「南島志」には、泡盛の製造工程とともに「密封七年にて之を用ふ」と記しています。王朝時代、江戸への献上品は 7 年以上の古酒だったのかもしれません。
ペリー提督も飲んだ古酒
琉球王朝時代、泡盛は外国の主賓をもてなす国酒で、黒船が来航したペリー提督一行もその印象を記録に残しました。1853 年に琉球の晩餐会に招待された際、秘書官テイラーは泡盛を、「これまでこの島で味わった酒に比べてはるかに芳醇。まろやかに熟し、フランスのリキュールに似ていた」と記載。ブランデーにも匹敵する上質の古酒が振る舞われたと推測されます。
焼け跡から集めた黒麹菌
多くの泡盛酒造所が粉砕され、戦後の酒造りは 0 からのスタートでした。米軍管轄下で酒造りは禁止でしたが、人々は米の代わりに芋や糖蜜、ソテツなどで密売酒を製造。米軍政府も酒造所の必要性を認め、1946 年に 5 つの酒造廠(しゅぞうしょう)が誕生。戰爭で失われた潤麹菌を土に埋もれたニクブク(稲わらのむしろ)から見つけ、泡盛復興の道を拓きました。
沖縄ブームで泡盛も大ブレイク
1990~2000 年代にかけて到来した全国での沖縄ブーム。1992 年の首里城復元時にNHK大河ドラマ「琉球の風」が放映され、芸能界では安室奈美恵をはじめ、SPEED、MAX、DA PUMP など県出身者のアーティストが活躍。2001 年にはNHKの連続ドラマ「ちゅらさん」が大ヒット。観光客も大幅に増え、2003 年には年間500 万人を初突破。泡盛もブームに乗って大きく成長し、東京や大阪、福岡などの都市部での沖縄居酒屋の増加も後押しとなって、県外出荷が大きく増えました。ブームで知名度や出荷量はUPしましたが、日本全体での泡盛消費量はまだまだ小さなもの。泡盛の素晴らしさをより広めたいです。
琉球泡盛の製法 ~手間ひまと愛情から極上の一滴が生まれる。~
泡盛ができるまで
泡盛の製造工程は、簡単に説明すると次のようになります。
〔1〕原料米移入:泡盛の原料は主にインディカ種のタイ米です。
〔2〕洗米・浸漬(米を水に浸すこと)・蒸し:洗った後しばらく水に浸け、蒸しに必要な水分を吸収させ米を蒸します。
〔3〕製麹:種付けをしてもろみに必要ないい麹をつくる。
〔4〕仕込み:蒸し米を 40 ℃に冷まし、黒麹菌を混ぜた後、約 2 日間かけて米麹を作ります。
〔5〕もろみ(水と酵母を加えアルコール発酵):米麹をもろみタンクに移し、泡盛酵母と水を加えて約 2 週間アルコール発酵させます。
〔6〕蒸留:発酵後のもろみを蒸留して泡盛の原酒が完成。単式蒸留機を用いるのが特徴です。
〔7〕熟成(割り水して度数調整):割水で度数を調整し、半年から 1 年、タンクや麹で原酒を熟成。味や香りを豊かにします。
〔8〕容器詰め:長期貯蔵された泡盛は瓶詰、壺詰など各容器に詰められます。そして倉庫で待機した製品は、いよいよ全国の皆様のお手元に届けられます。
黒麹の源流は沖縄にあり ~琉球泡盛だけが持つ魅力 米と黒麹菌の絶妙なハーモニー~
Q5. 黒麹菌の特徴
泡盛は伝統的に黒麹菌を使っているのが大きな特徴で、これを使って酒造りを行っている地域は世界的に見ても珍しいとされています。黒麹菌は酒の製造過程でクエン酸を大量に生成するため、ほかの麹菌に比べてもろみ(米麹に水と酵母を加えてアルコール発酵させる段階)の酸度を高くすることができ、雑菌による腐敗を抑えることができます。そのおかげで泡盛は日本酒と違って年中造ることができ、亜熱帯海洋性気候と呼ばれる高温多湿でさまざまな菌が繁殖しやすい環境でも、空気中に浮遊する腐敗菌から大切なもろみを守ることができます。沖縄の先人たちは、黒麹菌が亜熱帯の泡盛造りに最適であることを長い経験の中で自然と習得していったのでしょう。その黒麹菌を使った商品生産の源流は沖縄にあるのです。
Q6. インディカ米を使う理由
泡盛の原料には主に細長く硬いインディカ種のタイ米が使われています。タイ米は大正の末期には沖縄に輸入されはじめ、昭和の代に泡盛の原料として定着したといわれています。タイ米が使われるようになった理由としてはまず、硬質米でさらさらとしていて米麹(黒麹菌を混ぜて糖化する行程)にしたときに作業がしやすいことが挙げられます。また、水や酵母を加えてアルコール発酵させるときの温度官吏がしやすいということ。そして、他の米に比べてアルコールの収穫量が多いという大きなメリットもあり、泡盛を造るのに最適な米として、今や全酒造所で使われています。泡盛のオリジナリティーあふれる味わいには、香味豊かなタイ米が大きく関与しているのです。
沖縄の宝「古酒(クース)」 ~時が育むまろやかで芳醇な古酒の魅力~
Q7. 古酒とは?
泡盛の大きな魅力は、年月をかけて熟成させると味わい深い古酒(クース)に育つことです。甕やビンで「寝かせる(熟成させる)」ほど香りも甘くなり、舌触りもまろやかになります。その風味の芳醇さは、琉球国を訪れたペリー一行が「まるでフランスのリキュール(ブランデー)のようだ」と表現したように、現在でも世界的に評価されています。古酒の新規約では、3年以上熟成させた泡盛が全量 100% の場合、「古酒」の表記が許されます。5年以上も同様で、異なる年数の古酒をブレンドする場合は若い方の年数を表示します。古酒は熟成が進む間、バニラのような甘い香りに代表される実にさまざまな香りを醸し、独特の豊かな風味を増していきます。それを楽しむのも古酒の大きな魅力といえるでしょう。
Q8. 泡盛はなぜ古酒になるのか?
樽に貯蔵され、樽から香りの成分をもらって熟成していく洋酒と違い、泡盛はそれ自体に含まれる成分そのものが長期熟成されることで、物理的・科学的な変化を経て、香味成分などに変化しまろやかで甘い香りを醸しだします。さらに瓶詰めをした後でも古酒化が進むのが泡盛の大きな特徴です。泡盛にはさまざまなアルコール類や脂肪酸(有機酸)、脂肪酸エステル、フェノール化合物などが含まれているため、その香りもバニラやキャラメル、チョコレートのような甘い香りからリンゴや洋梨、オレンジなど果物のようなフルーティーな香り、バラやキノコ類のような香りと実にさまざま。泡盛には幾つものアルコール類、有機酸類が含まれているため、その組み合わせの数だけ、香り豊かで味わい深い「古酒」になる可能性を秘めています。
百薬の長・泡盛と健康の美味しい関係。~泡盛は低カロリー 泡盛は糖質0・プリン体0~
泡盛や本格焼酎などの蒸留酒は、カロリーが低いお酒として、女性にもかなり愛飲されています。ビールや日本酒、ワインといった醸造酒にはブドウ糖などの糖質が含まれておりますが、その点、泡盛は蒸留酒なので、糖質やタンパク質を含んでいません。アルコールは0カロリーではありませんが、体内でエネルギーとして利用されにくく、熱として放出される率が高いそう。日本酒と泡盛の水割りを例に取って比べてみても、その差は約 40kcal になり、泡盛が低カロリーであることを物語っています。また、泡盛は糖質0です。
Q11. 血栓を溶かす泡盛の効能
泡盛には血液をサラサラにする効果が期待できるといわれています。他のお酒を飲んだときよりも泡盛や本格焼酎を飲むほうが、凝固した血液を溶かす因子(繊維素溶解酵素)、プラスミンの量が増えるという研究報告があるそうです。上の図からも、ウィスキー、ビール、ワイン、日本酒などに比べ、本格焼酎、泡盛の方がよりこの働きを活性化する働きがあることが読み取れます。この結果から、泡盛も適量を飲むことで血液がサラサラになり、血栓症(脳梗塞、心筋梗塞など)を防ぐことができることが示唆されています。さらに泡盛の製造には欠かせない黒麹菌で造られたお酒には、活性酸素を除去することが期待できるポリフェノールの一種が含まれてるという報告もあり、健康という視点からも泡盛が注目されています。