歴史的役割を終えた “マチグヮー”

今月18日付琉球新報21面に “マチグヮー「行かない」40%” と題した那覇市民意識調査の記事が掲載され、那覇市民のマチグヮー(商店街)と国際通り離れの実態が明らかになりました。

ブログ主は21世紀に入ってから、仕事やプライベートで国際通りを訪れる機会が多いので、那覇市民のマチグヮー離れを実感してましたが、今回の意識調査でそれが裏付けされた形となりました。ではなぜ “マチグヮー離れ” が起きたのか、ブログ主なりに調子に乗って解説しますので、読者のみなさん是非ご参照ください。

その前に琉球新報の記事を書き写しましたので一読ください。

マチグヮー「行かない」40% / 最多、国際通りも30%

【那覇】那覇市は6日、2021年度の那覇市民意識調査の結果を発表した。市の中心部にある第一牧志公設市場などのマチグヮー(商店街)へ行く回数について市民に聞いたところ、「全くいかない」が40.2%と前回18年の29%より11.2㌽増加し、過去最多を更新した。国際通りも「全く行かない」が30.3%(前回21.8%)で過去最多となった。市民の「マチグヮー・国際通り離れ」が浮き彫りとなった。

那覇市民意識調査 / 休憩施設、駐車場整備求める声

市民意識調査は今回で24回目。2年ごとに実施しているが、調査実施年にあたる20年度は新型コロナウィルス感染症の影響で延期となり、21年度に実施した。期間は21年9月6日~26日。18歳以上の市民5千人に調査票を郵送し、1325人(26.5%)から回答を得た。

調査ではマチグヮーや国際通りを魅力的にするための方策も質問し、「気持ちよく利用できるトイレや休憩施設の増設」が48.6%と最も多く、次いで「日陰などの環境整備」が31%、「駐車場の整備」が29.9%と続いた。

マチグヮーにや国際通りにいかない市民が増加していることについて、市は新型コロナウィルス感染症による外出控えが要因の1つとみている。担当者は「改善策として、昨年10月に開館して那覇文化芸術劇場なはーとや、23年にオープン予定の新たな第一牧志公設市場によって、中心市街地の魅力発信につながれば」と期待する。

城間幹子市長は「いかにして市民に足を運んでもらえるか、市と商店街の皆さま、企業と連携して対応していきたい」と述べた。(中略)

今回、ブログ主は沖縄県立図書館で現存する最古の那覇市の地図(ゼンリン・昭和44年)から平成21年(2009)まで10年区切りで国際通りをチェックしました。そこで驚いたのが平成15年(2003)以前と以降で国際通りの店舗構成が激変している点です。

実は平成15年には(那覇市にとって)2つの大きな出来事がありました。1つはゆいレールの開通、もうひとつはそれに合わせておもろまちの大型商業施設がオープン(天久りうぼうはゆいレール開通前から営業)したことです。そしてこの時期から那覇市民が大型駐車場が完備されているおもろまち(あるいは小禄)に買い物や遊びに出かけるようになります。

国際通りから “映画館” が撤退したのもこの時期です(例外は桜坂劇場)。つまり平成15年を機に那覇市民は国際通り等へ買い物や遊びに行かない傾向が生じたと言えますが、その代わりに観光客がどっと押し寄せてくるようになります。

観光客にとって国際通りは最高の立地です。那覇空港からゆいレールで移動は10分程度、県庁前、美栄橋、牧志の3駅を利用でききる交通の便のよさに、飲食や土産購入に全く不自由しない場所です。観光客が集まらない訳がありません。プラス平成16年(2004)以降のホテル建設ラッシュにより、国際通りは “観光ホテル街” として急速にリニューアルしたのです。

大雑把に言えば、平成15年を境にして地元民はおもろまちや小禄、観光客は国際通りやマチグヮーとの “すみ分け” が出来たわけで、令和元年(2019)まではそれで何の問題もありませんでした。だがしかし昨今のコロナ禍で観光客数が激減したことによって国際通りは衰退の憂き目にあってしまいます。

ではマチグヮーや国際通りは復興できるのか。誤解を恐れずにハッキリ言うと “ノー” と言わざるを得ません。その理由を2つ挙げておきます。

一つ目は引用した記事にも明記されてましたが “衛生的なトイレの数” が少ないことです。国際通りの場合は、各所に点在しているコンビニやパレット久茂地などの大型商業施設で対応できますが、平和通りや市場本通りなどのマチグヮーは明らかに不足してます。平成生まれ、特に21世紀生まれの世代はウォシュレットが付いてないトイレを敬遠する傾向が著しいですし、マチグヮーでそれに対応できるのは新天地のセブンイレブンなど限られた場所にしかありません。

・アーケード街に設置されているマチグヮーの公衆トイレの現状を撮影してきました。

・衛生的なトイレは新天地のセブン・イレブン、ドンキ・ホーテ国際通り店、そして仮設の牧志第一公設市場内ぐらいでしょうか。

ただし、衛生的な公衆施設なら何とか対応できるかもしれません。だがしかしPayPay(ペイペイ)などの電子決済が使えない店舗が多すぎる点が致命的です。そしてこれが国際通りやマチグヮー復活を妨げる最大の要因なのです。理由は簡単で、商店街で一斉に電子決済を導入することが不可能だからです。

ブログ主も試しに複数の店舗で買い物をしましたが、バーコード決済が使えない不自由を改めて痛感しました。観光客であればその点をわきまえて現金で対応するでしょうか、地元民はそうはいきません。いまや自動販売機ですら電子決済の時代で、マチグァーは完全に時代に取り残されてしまったのです。

たしかに国際通りの個別店舗でクレジットカードだけでなくバーコード決済に対応できるところも増えてきましたが、残念ながら郊外の大型商業施設やコンビニはほぼ100%電子決済で対応できます。駐車場が少ないという従来の欠点に加えて、衛生的なトイレの不足、そして電子決済が使えない現状では地元民が敬遠するのも無理はありません。

もはや観光客が戻って来ることに一縷の望みをかけるしかないマチグヮーの現状を悲しみつつ、今回の記事を作成したブログ主であります。

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