害虫の異常発生

今回は昭和51(1976)年12月に山口組が沖縄に進出した際の反応について言及します。当時の新聞記事によると、同年12月6日に那覇市曙に上原組が山口組系大平組の直系(三次団体)として事務所開きした旨記述がありました。

ちなみに山口組の傘下として上原組が那覇に再進出した件は、沖縄ヤクザ史上に残る “大愚策” であり、詳細については後日言及することにして、まずは同年12月9日の琉球新報の記事をご参照ください。

那覇に山口組の看板

県警は警戒 / 上原一家が杯受けて

昨年2月、国頭村楚洲で旭琉会反主流派、上原勇吉組員3人が射殺され、この後、上原は本土に逃亡していたが、さる6日、那覇市安謝に上原一家が看板を掲げた。上原組はすでに山口組系大平組からサカズキを受けている。このため、県警捜査二課と那覇署刑事二課では内偵捜査を続けているが、抗争事件が起こることが予想される、として警戒を強めている。

那覇署の調べによると、本土に逃げていた上原勇吉一家の組員(約20人)が11月末から同市安謝に進出、事務所を去る6日に開き、「山口系大平組直系上原組」と堂々と看板を掲げた。現在、旭琉会の会長など最高幹部は殺人教唆、また、恐かつなどで逮捕されなりをひそめているが、上原一家が看板を掲げたことから抗争が激化すると見られている。今のところ、上原勇吉は姿を見せないが、近いうちに姿を現す可能性も出て来た。また、組員は県人で構成されているが、いったん事が起これば、山口組からの応援もあると県警は見ている。

県警では上原勇吉が大阪の山口組系に身をひそめているという情報は得ていたが、いきなり、看板を掲げたことにア然としている。現在のところ、旭琉会から上原一家に対して殴り込みなどは発生してないが、すでに旭琉会も上原一家の旗あげを知っていることから、今後、暴力団抗争が起こるのは必至と分析している。なお、県警や那覇署では上原一家の動静を監視するとともに、なにか事が起こればただちに逮捕していく方針。

引用元:昭和51(1976)年12月9日付琉球新報11面

復帰前後から山口組の沖縄進出は時間の問題と見られてましたので、世論は “ついに来た” という感じでしたが、それでも本土に逃亡していた上原勇吉一家がいきなり那覇市曙に事務所を構えたことは世間に衝撃を与えました。

参考までにこの案件に関する琉球新報の〈金口木舌〉が傑作でしたので全文を紹介します。

金口木舌

まさか打ち合わせたわけでもあるまいか、昆虫の世界と人間の社会に害虫が異常発生している。

▼かたやアオドウガネ。キビの根からやがて茎にくらいつく。キビは黄色く立ち枯れ、甘き砂糖汁はカラカラ。かたや「山口系大平組直系上原組」。在来種の害虫族旭琉会という吸金属暴力〔団〕の下火に乗じた移入もどき。在来種とテリトリー(領分)を争おうとする新亜種である。

▼コガネムシの一種であるアオドウガネは復帰時の1972年の発生単位は30だった。1975年は1万2千。じつに4千倍の超激増ぶりだ。土着害虫だが、本土でも35件でコガネ虫が異常発生中だから彼らは全国的に連絡をとりあって決起しているらしいのである。

▼分蜜糖工業会の推計では2千3百㌧、宮古のキビ作面積の12%が全滅した。ほったらかしておけば砂地の栽培地帯のキビは来年全滅しかねない勢いである。さきにウリミバエ壊滅作戦にコバルト照射による駆除法を開発した県農業試験場はいま防除法を試験中。アオドウガネの天敵はハチの一種だが、こやつ皮肉なことに土壌殺虫剤のおかげで弱っているらしい。

▼防除にキメ手を欠いているのは、人間界のアオドウガネも同じこと。なにしろ堂々と看板をかかげた。新旧種の対決近し、とわかっていても効果的な駆除法が見つからないのだ。庶民がせっせと働いた甘い汁を吸おうと針先をあちこちに突き立てている。

▼害虫防除のコツは産卵期や幼虫時期にあると農業技師はいっている。人間の害虫の方はいま卵を産み、巣を構えたところだ。さて、天敵であるはずの警察はどのくらいの駆除力をもっているのだろう。

引用元:昭和51年12月12日付琉球新報1面

この論評を読んで、「なんでここまでボロクソに言われないといけないんだ?」「暴力団に人権はないのか」と思われる読者もいるかもしれません。“社会の害虫” なんて表現は(現代基準では)文句なしのアウトですが、当時の旭琉会のチンピラたちはそれに類する悪行をやらかしていたのもまた事実なのです。

参考までに、次回糸満に巣食っていた “喜屋武グループ” のハイレベルなやらかしを紹介します(続く)。

 

 

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