史料

黒い芽 – 暴力追放総決起運動 / (4) 家出

“ヤサグレ” といういん語がここでは、ある。

「オレ、とうとうヤサグレしてきちゃった」

「それに限らァ、家にいたってロクなことなんかありゃしない。だれもわかっちゃくれねェもンな」

「ネグラはどこにするかナ」

「どこだってあらァナ、××小学校にもぐり込んでもいいサ」

— とこんなぐあいに使う。つまり「家出」することがヤサグレ。どこからともなく仕入れてきた “黒い芽” たちの暗号である。本格的な非行がほとんどの場合この “ヤサグレ” から始まる。

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黒い芽 – 暴力追放総決起運動 / (3) リンチ

「オレたちから仲間割れしようたって、そうはさせねェ。ヘンな考え起こすと承知しねェぞ。のぼせあがって…」

「見せしめだ。みんなでのしちゃえ」

「だってアニキ…」

「構わねぇからやれ。少しぐれぇ痛い目にあわせにゃ目がさめねぇぜ」

そこで “ふくろだたき” の図が展開される。”指詰め” などと並んでやくざ映画につきもののリンチ(私刑)の典型的なケースである。

そのリンチ映画を地で行なったのが、さる2月5日の那覇市安謝での非行グループの集団暴行事件だ。

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黒い芽 – 暴力追放総決起運動 / (2) たまり場

“スキダァヨー、スキダァヨー

はァとが燃エルンダ…… “

— がなりたれるようなジュークボックス。”旭のツイスト” にのって投げつけるようなツイスト・ダンス。幾組もの男女 — といっても中学生か高校生ぐらいの “黒い芽” たちだが、文字通り “無我” の表情で足をはね上げ、腰をふり、手をバタつかせる。笑いと奇声がキンキン耳をつんざいて、すさまじい狂乱のムードである。

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黒い芽 – 暴力追放総決起運動 / 暴力地図(1)

“島ぐるみ” の「暴力追放」運動がはじまった。こんどの運動で、実施本部がとくに重点的に追い打ちをかけようというのが既成暴力団の根絶と併行して、小さいヤクザたちのしめ出し。「暴力つみとりは芽のうちに – をあいことばで、社会の裏側にはびこりつつある暴力の “黒い芽” に集中攻撃をかける構えだ。 – そこで、これら “黒い芽” の実態をさぐってみた。

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大りうちうについて

以前、当運営ブログに “首里場関連” のカテゴリーを追加しましたが、残念なことにブログ主の予想の斜め下をいく不人気ぶりに、記事をアップすることをすっかり忘れていました。だがしかし、本日付沖縄タイムス21面に見逃すことができない記事が掲載されていましたので、速攻で全文を書き写しました。

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沖縄の百年 第一巻 / 人物編 近代沖縄の人びと / 岸本賀昌

1868年(明治1)年那覇市に生まる。1882(明治15)年第一回県費留学生として上京、学習院や慶應義塾に学ぶ。沖縄県庁勤務から内務省に抜擢されて町村課の係長となり、石川県参事官、沖縄県参事官、同学務課長を経て1912年(明治45)年沖縄で初の衆議院議員選挙に当選、国政に参与する。晩年は那覇市長。公務で上京中1928年(昭和3)年病没。61歳

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私の戦後史第5編 / 沖縄タイムス社編 / 宮城嗣吉(3)

辻で遊び過ぎ、県下に「スーヤー三郎」で知られた私を、東京から帰ったばかりの仲宗根源和氏が訪ねてこられたのは昭和5年。用件は本土中央で船越義珍先生が「唐手術」として普及、発展させている武術を柔道、剣道同様に「空手道」として発展、普及を推進して行こうという。

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沖縄歴史散歩 / 第2部 大和化と創造 / 近世の社会と人間

武士道のない国 武器としての刀剣を全然もたなかったかというと、そうでもないらしい。蔡温の『蓑翁片言』に、若侍が訪ねてきて家宝にしている「利剣一口」の自慢話をしたということが書かれている。この若侍にたいして、「世伝ノ大宝ハ唯ダ汝ガ見コレナリ、何ゾ日ニ其身ヲ拭カザルカ」と戒めたというのが、話のしめくくりである。

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沖縄の右翼

東声会支部が誕生 沖縄の右翼が表面化した。警察当局では教公二法問題をめぐり騒然とした政情を背景に起きた革新団体、個人にたいする一連の放火、脅迫事件は、関連性があり右翼団体の仕わざであると言明し、30日白昼発生した「福地事件」を政治テロの疑いが濃いとしている。

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満韓旅行雑感(中)/ 中学生生徒 又吉康和

◎商業 彼等は商業上の取引甚だ巧なり。彼等は売値に二三倍も掛けるなり。彼等は非常に忍耐強く、性質よく、商業に適せるが如し。彼等は非常に信用を貴ぶ〔故に〕彼等に一度不信用せられたる日には最早それ迄(まで)なり。我が商人が彼等に対し信用薄きことを聞き甚だ遺憾に堪ざりき。

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満韓旅行雑感(上)/ 中学生生徒 又吉康和

同じ水も牛が飲めば乳となり蛇が飲めば毒となる。旅行もまたその場所により人に依りて益ともなり害ともなるあらん。あヽ余は今度の旅行ほど利益ありし旅行は過去を尋ねても、はたまた将来に於てもそを求むるに難きことヽ思ふ。

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伸びる “黒い手”

昭和の沖縄のぶっそうな常識のひとつに、「タクシーに乗った際には暴力団の話はするな」があります。その理由はお察しかと思われますが、暴力団関係者が経営しているタクシー会社が存在することは沖縄社会における公然の秘密だったからです。

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売春は古い社会の古いものがたり

今回は約50年前の琉球新報に掲載された中国訪問記を紹介します。『中国の旅』と題した特集記事が昭和48年7月から15回にわたって掲載されていてましたが、3回目の内容が非常に気になったので全文を書き写しました。

特集記事の著者は外間米子さん(1928~2005)、婦人活動家としても有名で『時代を彩った女たち / 近代沖縄女性史』の監修者としても知られています。

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明治時代の衛生に関する県令・訓令

新型コロナウィルスに関連して、我が沖縄における医療・衛生の沿革をチェックしている際に明治31(1898)年4月の琉球新報に興味深い記事が掲載されていることに気が付きました。

今回は同年同月19日の県令(県知事が発した命令)、および28日の訓令(上級官庁が下級官庁に下す命令)全文を紹介します。ただし読者の便宜を図るべく、旧漢字を訂正および句読点を追加しました。是非ご参照ください。

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